全東信の経営破綻で広がる加盟店への影響
クレジットカード決済の仲介事業を手がけていた全東信が、裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。飲食店を中心とする取引先への支払いが滞り、加盟店に渡っていない資金は約53億円に上る。売上代金の入金を前提に経営していた事業者の間では、当面の運転資金を確保できない事態が生じている。
経済産業省が設けた特別相談窓口には、7月13日時点で82件の問い合わせが寄せられた。相談内容は、資金繰りへの不安や利用可能な融資制度の確認など多岐にわたる。全東信の破綻は、1社の経営問題にとどまらず、決済サービスを利用する加盟店の事業継続にも影響を及ぼしている。
カード会社と加盟店を結ぶ独自の事業構造
全東信は、カード会社から加盟店へ支払われる立替金を代わりに受領する仕組みを採用していた。そのうえで金融機関から融資を受け、実際の入金時期より前に各店舗へ資金を渡していた。加盟店にとっては、カード決済の売上を早期に現金化できる点が利用上の利点となっていた。
一方、この業務は消費者に信用を供与するカード会社の事業とは性質が異なる。全東信は加盟店への送金や資金の先払いを担っていたものの、カード利用者に対する与信業務は実施していなかった。この違いが、既存の監督制度から外れる要因となった。
割賦販売法の対象外だった決済代行会社
経済産業省は、割賦販売法に基づきクレジットカード会社を登録制の下に置き、財務状況などを確認している。カード会社は消費者への与信を担うため、事業の安定性や適正な運営について行政の監督を受ける。しかし、与信を行わない決済代行業者には同じ枠組みが適用されていない。
赤沢亮正経済産業相は7月14日の閣議後会見で、全東信が同省の監督対象ではなかったと説明した。決済代行業は金融分野と商取引の双方に関係する一方、所管する行政機関が明確でない部分がある。今回の破産によって、事業規模や財務状態を継続的に確認する制度が整っていなかった実情が表面化した。
関係省庁が業界の取引実態を調査へ
経済産業省は、クレジットカード決済に関係する代行事業者について、関係省庁と協力して調査する方向で検討を進める。各社がどのような方法で資金を調達し、カード会社から受け取った金銭を加盟店へ渡しているのかを把握する方針だ。事業領域が複数の行政分野にまたがる可能性も踏まえ、省庁横断で対応する。
調査では、全東信が支払い不能に至った経緯の確認に加え、同様の仕組みを採用する事業者の状況も重要になる。決済代行会社を介した資金の流れや、加盟店への支払い方法を整理することで、問題の原因を特定する。得られた結果を基に、同種の事態を防ぐための対応策を検討する。
利便性を維持した再発防止策が課題に
政府による監督を強める場合には、加盟店への影響も考慮する必要がある。規制に対応するための費用が増えれば、事業者が徴収する手数料に転嫁される可能性がある。さらに、資金管理を厳格化することで、加盟店が売上代金を受け取るまでの期間が長くなることも想定される。
赤沢経産相は、現段階で監督強化を慎重に検討すべきだとの立場を示した。早期入金を必要とする店舗にとって、決済代行サービスは資金繰りを支える役割を持つ。行政には、加盟店の資金を守る仕組みと、サービスの利便性を損なわない制度設計の両立が求められる。
