エヌビディアCEOが秋葉原で明かした創業期の危機とセガから受けた500万ドル支援への30年越しの率直な感謝表明

井村 智規
经过

秋葉原に集まった両社関係者とゲームファン

米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は7月15日、東京・秋葉原で開かれたセガとの関係を振り返るイベントに出席した。両社が約30年にわたって築いてきたつながりを記念する催しで、周辺には数百人のゲームファンが集まった。

会場には、セガサミーホールディングス社長兼セガ会長の里見治紀氏、セガ社長の内海州史氏、元セガ社長の入交昭一郎氏らが登壇した。「バーチャファイター」を生み出したことで知られる鈴木裕氏も参加し、かつてゲームと半導体の開発を通じて関係を築いた関係者が顔をそろえた。

予定より約1時間遅れて姿を見せたフアン氏は、集まったファンの歓声に応え、サインに応じる場面もあった。

セガの支援で乗り越えた創業初期の経営危機

1993年に設立されたエヌビディアは、創業当初からゲーム向けの画像処理技術を主要事業としていた。当時、同社が強い関心を寄せたのが、セガの対戦格闘ゲーム「バーチャファイター」で採用されていた3次元技術だった。

その後、エヌビディアはセガから家庭用ゲーム機向けGPUの開発を任された。しかし、プロジェクトは予定通りに進まず、同社は経営の継続が危ぶまれるほど深刻な資金難に直面した。

フアン氏はイベントで、開発を完成させられない一方、事業を続けるには資金が必要だった当時の状況を説明した。その申し出を受け入れたセガの対応について、深い謝意を表した。

頓挫した家庭用ゲーム機向け半導体開発の経緯

エヌビディアが携わったのは、セガの家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」に関連する半導体チップの開発だった。新しいゲーム表現を実現するための重要な部品として期待されていたが、1996年に開発計画は行き詰まった。

受注した製品を完成させられなかったことは、創業から間もないエヌビディアに大きな打撃となった。十分な事業基盤を持たない段階だったため、プロジェクトの失敗は資金繰りの悪化に直結した。

通常であれば、発注側のセガが協力関係を終える可能性もある局面だった。それでもセガは、開発結果だけでエヌビディアを評価せず、同社が持つ技術と今後の可能性に目を向けた。

500万ドルを決断した入交昭一郎氏の評価

当時セガ副社長だった入交氏は、危機に直面したエヌビディアに約500万ドルを提供する決断を下した。半導体開発が不調に終わった後も、エヌビディアの技術水準と将来性を高く評価していたためだった。

今回のイベントでは、入交氏本人も登壇し、フアン氏と当時を振り返った。フアン氏は、製品を納入できないにもかかわらず資金を必要としていたという難しい依頼に、入交氏が好意的に応じたと説明した。

セガの資金援助を受けたことで、エヌビディアは深刻な経営難を切り抜け、事業を存続させることができた。現在では世界有数の半導体企業となったが、その成長の出発点にはセガの決断があった。

30年を経て示されたフアン氏の感謝と再会

フアン氏は、セガの援助がなければ現在のエヌビディアは存在していないとの認識を示した。開発の失敗で終わる可能性もあった両社の関係は、資金支援を通じて企業の存続を支える結び付きへと変化した。

イベントは、エヌビディアの成功を紹介するだけでなく、創業期に手を差し伸べたセガと入交氏に敬意を伝える機会となった。関係者の再会は、ゲーム産業と半導体産業が交差した1990年代の経緯を改めて示した。

フアン氏の日本への公式訪問は、2025年10月以来約9カ月ぶりとなった。催しを終えた後には東京・神田へ移動し、やきとんチェーン店で夕食を楽しんだ。

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