報道素材の扱い巡り訴訟に発展
米CNNテレビは5月28日、生成AI検索サービスを運営する米新興企業パープレキシティをニューヨークの連邦地裁に提訴した。CNNは、自社が制作した記事や動画が許可なく利用され、著作権を侵害されたと訴えている。訴えでは、問題とする利用の停止と損害賠償を求めた。
CNNによれば、米国のテレビ局が生成AIに関する著作権訴訟を起こすのは初めてとみられる。生成AIの普及により、報道機関が作成したコンテンツの利用範囲が新たな争点になっている。今回の裁判は、テレビ局がAI企業の情報利用に正面から異議を唱えた事例である。
交渉決裂後の利用継続を問題視
訴状では、CNNとパープレキシティが前年、記事を有償で提供する条件について協議したとされている。しかし、両者は条件面で一致せず、交渉はまとまらなかった。CNNは、その後もパープレキシティがCNNのコンテンツを使い続けたと主張している。
CNN側の主張は、契約が成立しなかったにもかかわらず、自社の報道素材が利用されたという点にある。記事や映像は、報道機関が取材や編集を通じて制作したコンテンツである。CNNは、こうした素材の利用には権利者の許可や適切な条件が必要だとする立場を取っている。
AI企業側は事実の著作権保護を否定
パープレキシティはCNN側に対し、「事実は著作権で保護できない」との見解を示した。これは、報道で扱われる事実情報と、記事や映像として構成された表現部分を分けて捉える立場である。CNNは、単なる事実の使用ではなく、自社が制作したコンテンツを許可なく利用されたと主張している。
この対立は、生成AI検索サービスの仕組みと報道コンテンツの保護を巡る問題を浮き彫りにした。AIサービスは、利用者に対して情報を整理して提示する。報道機関は、その情報の基礎となる記事や映像を制作しており、権利の扱いを明確にする必要があると主張している。
海外紙や日本メディアにも波及
パープレキシティを巡る著作権上の対立は、CNNだけにとどまらない。ニューヨーク・タイムズ紙なども、同社による記事の無断利用を問題視し、利用差し止めを求めて訴訟を起こしている。米メディアの間では、生成AI企業による報道コンテンツ利用への警戒が強まっている。
日本でも、共同通信社や加盟社がパープレキシティに対し、著作権侵害を指摘した。利用停止を求める抗議書や抗議声明が出されており、同社のサービスを巡る問題は国際的な広がりを見せている。AI検索サービスと報道機関の関係は、各国で共通する課題となっている。
AI時代の権利保護が問われる局面
CNNの提訴は、生成AIが報道分野の情報を扱う際の法的な境界を問うものとなった。CNNは、記事や動画の無断利用を著作権侵害と位置付け、裁判所に差し止めと賠償を求めている。パープレキシティは、事実情報は著作権で守られないとの見解を示している。
裁判では、報道機関が制作したコンテンツの表現部分と、そこに含まれる事実情報の区別が焦点となる。生成AI検索サービスが既存メディアの情報をどのように利用できるのかも問われる。今回の訴訟は、AI技術の発展と報道機関の権利保護の関係を示す重要な事案となった。
