北京会談で示された中国の主張
中国の王毅外相とドイツのワーデフール外相が12月8日に北京で協議を行い、台湾情勢と歴史認識を中心に意見を交わした。中国外務省の説明によれば、王外相は日本政府、とりわけ高市早苗首相による台湾有事への国会答弁を取り上げ、日本が過去の侵略行為を十分に見直していないと指摘した。さらに、中国が主張する台湾問題での立場について理解と支持を示すようドイツ側に促したとされる。会談は両国の外交課題を確認する形で進められ、台湾を巡る安全保障環境にも議論が及んだ。
日本批判を交えた台湾情勢への言及
王外相は高市首相の国会での言動を厳しく批判し、第二次大戦後の国際秩序や戦勝の成果を揺るがす要素が含まれると主張した。台湾問題を「核心的利益」と位置づける中国にとって、高市首相の発言は安全保障面で看過できない内容と捉えられている。中国は複数の欧米諸国との対話でも同様の論点を提示しており、日本政府の姿勢を国際場裏で問題視する動きを強めている。今回の会談でも、台湾独立に向けた一切の主張や動きを排除する考えを繰り返し示し、地域の緊張要因に対する警戒感を強調した。
ドイツ側が示した従来方針
ワーデフール外相は、中国側の要請に対し、ドイツが維持してきた「一つの中国」政策を堅持する姿勢を伝えたとされる。ただし、中国外務省が公表した内容には、日本の歴史認識に関するドイツ側の見解は示されていない。ドイツは台湾海峡の武力による一方的な状況変更に反対する立場を表明してきた経緯があり、その姿勢は会談後も変わらないものとみられる。今回の協議では、中国の要望に全面的に応じる形ではなく、既存の外交方針の枠内で対応したことがうかがえる。
国際社会で展開される中国の働きかけ
中国は欧州や北米との二国間協議において、台湾問題での支持を得るための外交活動を強めている。高市首相の発言を取り上げる形で各国に自国の立場を説明し、日本への批判を含めた発信を継続している。今回の北京会談でも、台湾を巡る中国の認識を改めて伝え、「台湾独立」を阻止する姿勢を強調した。こうした動きは、中国が地域情勢の主導権を確保する意図を持つと同時に、国際社会への影響力を高める狙いがあるとみられ、外交面での情報発信の戦略性がうかがえる。
安全保障環境と欧州の関係強化
両外相は台湾以外にもウクライナ情勢について意見交換し、国際秩序を巡る課題を共有した。報道によれば、ワーデフール外相は中国が国際的な影響力を行使することへの期待を示したとされる。ウクライナ問題は欧州の安全保障と密接に関わるテーマであり、中国が果たす役割への関心は高い。今回の協議は、歴史認識や台湾情勢を含む複数の外交課題を確認する場となり、ドイツと中国の外交通信の継続性を示すものとなった。
