トランプ政権、非爆発型核実験を計画 34回目の臨界前手法へ

井村 智規
经过

大統領が指示した核兵器実験計画の概要が明らかに

米国のドナルド・トランプ大統領は10月30日、自身のSNSで「核兵器実験を直ちに開始するよう国防総省に指示した」と公表した。この発言は、冷戦終結以降の核実験モラトリアムを覆すものとして波紋を呼んだ。トランプ氏は「他の核保有国と対等な立場に立つため」と強調したが、発言当初は爆発を伴う実験かどうか明らかにせず、懸念と憶測を生んでいた。

エネルギー長官が「臨界前」として実験の性格を説明

この問題について、エネルギー長官クリス・ライト氏は2日、テレビ番組で「爆発は伴わない臨界前核実験になる」と明らかにした。ライト氏は「現時点で議論しているのはシステムのテストであり、核爆発ではない」と述べ、実験の安全性を強調した。さらに、ネバダ州の実験場周辺で“きのこ雲”が見える懸念について問われ、「その心配はまったくない」と断言した。

コンピューター技術で核爆発を再現する検証手法

ライト氏によると、臨界前実験では高性能計算技術を用い、爆発を起こさずに核反応や設計変更の影響を再現的に分析することが可能だという。こうした実験は、実際の核爆発を伴わないため国際条約上も問題がなく、兵器の信頼性や寿命を確認する手段として活用されてきた。米国はこれまでも核爆発を行わず、精密なシミュレーションと物理検証を組み合わせる方式を確立しており、今回の計画もその延長線上にある。

米国が過去に行った臨界前実験の経緯

臨界前核実験は、1997年以降、米国エネルギー省核安全保障局(NNSA)によって管理され、これまでに計34回行われている。最新の実験はバイデン政権期の2024年5月に実施された。トランプ政権下の計画は35回目となる見通しで、実験場では新しいデータ収集システムの導入が検討されている。爆発実験の再開ではなく、既存技術を用いた非爆発的検証の一環と位置付けられている。

国際社会の反応と安全保障上の意味合い

核爆発を伴わない実験であっても、米国の決定は他の核保有国に強い影響を及ぼす可能性がある。特に、ロシアや中国などは自国の核戦力維持を理由に同様の動きを強化する恐れがあり、軍備管理体制への不信感が拡大しかねない。専門家の間では、臨界前実験が核兵器開発競争の“前段階”とみなされるリスクも指摘されており、国際社会の緊張は一段と高まりつつある。

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