妊婦の鎮痛剤服用巡り米政権と専門家が対立

宇津木 柊
经过

トランプ大統領が使用制限を推奨

22日、トランプ政権は妊婦がアセトアミノフェンを服用すると子どもの自閉症リスクが増す可能性があると発表した。大統領は「妊婦は極力避けるべきだ」と主張し、高熱時など限定的な使用にとどめるべきだと訴えた。

政府の対応とFDAの動き

発表に同席したケネディ厚生長官は、FDAが医師向けに警告を出し、安全性ラベルを改定する予定であると説明した。さらに、葉酸関連研究を根拠に「ロイコボリン」を自閉症治療薬として承認する方針を示し、研究成果を政策に反映させる姿勢を示した。

医療界が反発、科学的証拠を否定

米産科婦人科学会や米精神医学会は即座に反論し、「過去の研究では明確な因果関係は確認されていない」と指摘した。自閉症は遺伝的要因や環境的要因が複雑に絡み合う障害であり、単一の薬剤使用に原因を求めるのは科学的に誤りだと批判した。

製薬企業の懸念と反論

製造元のケンヴュー社は「科学的に裏付けられていない主張だ」と反発した。同社は妊婦が安全な鎮痛剤を失えば、より危険な代替薬を使用せざるを得ない恐れがあるとし、政府の発表が妊婦の健康を脅かすと強い懸念を示した。

研究の現状と社会的議論の広がり

自閉症の診断率は2000年以降急増しており、2020年には8歳児の2.77%に達した。研究者は診断基準の拡大や社会的認知の向上を要因とする一方、薬剤使用との関連は一貫していないと指摘する。今回の発表は、科学的検証を待たずに公表されたことで、医療現場や社会に混乱を引き起こしている。

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