トランプ政権の大学介入に司法が違法判決

井村 智規
经过

大学自治を侵害した措置を裁判所が否定

米国マサチューセッツ州の連邦地裁は9月3日、トランプ政権によるハーバード大学への助成金凍結を違法と判断し、解除を命じた。対象となった金額は20億ドル以上で、日本円にして3000億円超に相当する。裁判所は、政権が大学に求めた人事や入試方針の修正は、反ユダヤ主義対策とは関連性がなく、政治的介入であると結論づけた。

反ユダヤ主義を名目とした圧力強化

政権は、大学構内で行われたガザ情勢を巡るデモや、左派的とされる政策推進を理由に、助成金の打ち切りや研究プログラムの停止を迫った。とりわけハーバードは標的とされ、留学生受け入れや教授陣の配置をめぐる要求が相次いだ。大学側はこうした措置を拒み、「報復的で憲法に反する」と訴えていた。

判決の背景にある言論の自由

裁判所は、大学がユダヤ人学生の安全確保に不十分だったと認めつつも、政府の強制的な圧力は「言論の自由を規制するもの」と指摘した。判決は、大学の自主性と民主的価値の防衛を意味し、アカデミアと政治の緊張関係を浮き彫りにした。

政権の反発と控訴手続きの開始

ホワイトハウスは即座に声明を発表し、判決を強く批判した上で控訴の方針を明らかにした。今回の判断は一時的なものにとどまる可能性があり、今後の上級審での審理に注目が集まっている。判決が確定すれば、大学政策をめぐる政権の行動に大きな制約が課されることになる。

日本国内での波紋と留学生への懸念

日本政府は今回の裁判結果に関心を寄せている。林官房長官は記者会見で、「日本人留学生や研究者に不安の声が広がっている」と述べ、動向を注視していると強調した。日本と米国の学術交流に直結する問題であり、外交・教育分野にも波及する可能性がある。

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