インフレ懸念残る中で景気対策を優先
イギリスのイングランド銀行は、8月7日に政策金利を0.25%引き下げて4.0%とする決定を下した。高止まりするインフレ率にもかかわらず、景気の減速と輸出の鈍化を受けて、利下げを選択したかたちだ。
これにより、個人や企業の負担軽減が見込まれ、停滞する経済活動の支援が期待される。決定は経済実態に即した柔軟な政策対応と評価されている。
トランプ政権の関税が産業界に影響
利下げの背景には、トランプ米大統領による関税強化の影響がある。英国からの輸出品に対する高関税措置が発動されたことで、自動車産業など製造業への影響が急速に拡大している。
このような外的要因による経済の減速に対し、イングランド銀行は金融政策での対応を強化する必要に迫られた。声明では「経済活動における不確実性は依然として高い水準」と明記されている。
英経済成長が2か月連続で減速 景気後退懸念強まる
イギリスの国内総生産は2か月続けて減少しており、経済の立て直しは依然として難しい状況が続いている。とりわけ製造業分野では生産活動が鈍化しており、内外の需要の弱さが際立っている。
金融当局はこの状況を深刻に受け止め、経済の底支えを急務と捉えて政策転換に踏み切ったとみられる。
インフレ抑制と金融緩和の両立を模索
最新の消費者物価指数は前年比で3.6%上昇し、目標の2%を大きく上回っている。しかし、金融当局は「インフレの伸びは緩やかになってきている」とする分析を示し、利下げによるインフレ再加速の懸念をある程度払拭した形となっている。
今後は金融緩和とインフレ抑制のバランスをどう取るかが焦点となる。
各国中銀の動きにも影響か
欧州中央銀行は先月、金利を現行水準に据え置く決定を下し、英国とは異なる対応を取った。しかし、グローバルな経済の先行きが不透明であることから、他国の中銀も利下げ圧力を受ける展開が考えられる。
英国の今回の動きは、グローバルな通貨政策の一環として、今後の国際的な金融判断にも影響を及ぼすことが予想される。