EU、米関税に危機感 930億ユーロの対抗措置も視野

宇津木 柊
经过

合意重視と並行して報復も用意

EUは、8月から予定されている30%の米国関税を巡り、まずは交渉による妥結を目指す立場を明確にした。その一方で、930億ユーロにのぼる米国製品への対抗措置の準備も進行中であり、合意失敗に備える構えも見せている。このような対応は、EUが米側の強硬な通商姿勢に重大な懸念を抱いていることを物語っている。

通商担当者が米高官と直接協議へ

23日午後、EUの通商責任者であるシェフチョビッチ委員が米商務長官と直接協議を行う予定であり、焦点は高関税の回避に置かれている。協議終了後には、その内容がEU各国に説明され、対応方針の調整に活用される見通しだ。EU側は、合意を優先しつつも、米国の関税実施を現実的なリスクと捉えている。

報復関税の対象は多岐にわたる可能性

報復措置は、すでに提示されていた210億ユーロと720億ユーロのリストを統合し、合計930億ユーロ規模となる。これにより、航空機や農産物、ハイテク機器などの幅広い米国製品が対象となる可能性がある。ただし、対抗措置の発動は8月7日以降とされ、協議の余地を残す意図がうかがえる。合意形成が実現しなければ、報復関税の現実味が増すことになる。

日米協定がもたらす交渉上の影響

米国は22日に日本と通商協定を結んだばかりで、EUはその内容を注視している。特に、米国産コメの輸入増加と引き換えに農業関税を維持するという合意は、EUが自らの交渉材料を見直す上での参考となる。専門家によると、日本に対して設定された15%の関税率がEUの下限交渉ラインになる可能性が高いとされる。

EUの通商戦略とその課題

EUにとって、今回の関税問題は単なる貿易摩擦にとどまらず、域内経済と雇用への影響をも伴う重大な課題である。交渉による妥協点の模索と、必要に応じた対抗策の準備という柔軟な戦略を取ることで、圧力に屈しない姿勢を示そうとしている。今後数日間が交渉の成否を左右する局面となる。

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