約12兆円の対米関税案を欧州委が提示
欧州連合(EU)は、米国の一方的な通商強化策に対抗する形で、総額約720億ユーロに及ぶ米製品への報復関税案を策定した。これは、8月1日から予定されるEU製品に対する30%の関税措置を受けた防衛的対応であり、今後の交渉決裂に備えた第2弾の制裁とされる。
対象拡大により米製造業への打撃も想定
報復対象には航空機やバーボン、自動車だけでなく、機械、化学品、電気機器、ワイン、農産品、医療機器なども含まれる。ブルームバーグが確認した文書によると、米国の幅広い産業に影響が及ぶと見られ、米国内の雇用や投資行動への波及も懸念される。
対話継続の姿勢も関税発動には強硬
EUは対話継続を掲げつつも、通商担当のシェフチョビッチ委員が米通商当局との連日協議に臨んでおり、準備は着々と進行している。報道官は「交渉の余地は残っているが、対抗策を取る意思は変わらない」と説明しており、一方的な制裁には断固として応じる方針が明確に示された。
多国間協調へ、日本・カナダとの結束を強調
EUはルールに基づく貿易秩序の維持を目指し、日本やカナダとの協力強化にも注力している。EUと日本は今月中に首脳会談を実施予定で、両国は「競争力アライアンス」の共同設立を模索している。また、カナダのジョリー産業相は、「欧州との経済関係の強化が重要」との認識を示している。
世界経済に波及するトランプ関税の影響
通商政策におけるトランプ政権の独自路線は、BRICS諸国との緊張も高めており、国際貿易体制そのものの変動要因となっている。ブラジルをはじめとする複数国が米国市場への依存を見直し、他国との新たな経済連携を模索し始めている。EUによる報復関税は、その象徴的な反応のひとつといえる。