ブラジルへの圧力強化、トランプ政権の外交転換点

早瀬 涼真
经过

米国が通商政策を急転、関税50%を通告

米国は2025年8月1日から、ブラジルからの輸入品に対して50%の関税を適用すると決定した。これはトランプ大統領がルラ大統領に宛てた書簡で示されたもので、従来の10%案を大幅に引き上げた形となり、両国間の貿易体制に深刻な影響を及ぼすとみられる。

政治的背景にボルソナロ氏支持を明記

今回の関税強化には、単なる経済的理由だけでなく、ブラジルの政治情勢への米国の不満が含まれている。トランプ氏は書簡の中でボルソナロ前大統領への処遇と関税措置の関連性を明示。「米国の自由と言論への攻撃」と表現した姿勢は、外交政策のイデオロギー化と見なされている。

ブラジル政府、即座に外交抗議を実施

関税発表を受けて、ブラジル外務省は米国大使館の臨時代理大使を呼び出し抗議した。ルラ大統領はトランプ氏の主張に反発し、「世界に皇帝は必要ない」と明言。両国間の対立は経済だけにとどまらず、価値観と体制をめぐる外交的衝突に発展しつつある。

為替と株式市場に波及する経済的影響

発表直後、ブラジル通貨レアルは対ドルで急落し、2%以上の下落幅を記録。米国市場に上場するブラジル企業の株価も値を下げ、特に輸出関連企業への圧力が強まった。関税適用が現実となれば、サプライチェーンや市場戦略の再編も視野に入る。

米通商代表部がデジタル貿易の調査に着手

トランプ大統領はさらに、ブラジルによるデジタル分野での貿易障壁の有無を調査するよう指示USTRのグリア代表が調査を担当する。これにより、ブラジルに対する経済的・規制的圧力が段階的に拡大する構図が出来上がりつつある。

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