インテル業績回復が鮮明 構造改革とAI投資が功を奏す

早瀬 涼真
经过

売上高増とコスト抑制で7四半期ぶりに黒字化

米国の半導体大手インテルが2025年7〜9月期決算で7四半期ぶりの黒字を達成した。最終利益は40億6300万ドル(約6200億円)で、前年同期の166億3900万ドル赤字から劇的な回復を果たした。
主力のパソコン向け半導体需要が再び堅調に推移したことに加え、経営陣によるコスト抑制と投資の最適化が奏功した。全体の売上高は136億5300万ドルで、市場予想を上回る増収となった。

タンCEOの改革策が進展 経営基盤強化を加速

2025年3月に就任したリップ・ブー・タンCEOは、就任以来、構造改革を中心とした再建策を展開している。人員削減や設備投資の見直しを進め、9万9500人から7万5000人への削減計画を公表。経営効率の大幅改善を狙っている。
同氏はかつてCadence Design Systemsを率い、12年間で収益を2倍、株価を3200%上昇させた実績を持つ。今回の黒字化は、その手腕がインテルでも効果を発揮しつつあることを裏付けた。

ファウンドリー事業が縮小も赤字幅大幅改善

依然として課題を抱えるファウンドリー事業では、売上高が42億3500万ドル(前年比2%減)にとどまったが、営業損失は23億2100万ドルまで縮小。前年の57億9900万ドルからの改善幅は顕著だ。
投資の抑制が経営安定に寄与したほか、AI需要をにらんだ設備再編も進んでいる。生産拠点を厳選する戦略により、固定費削減と財務健全化が進行している。

政府支援と大手出資で再建に弾み

インテルは米政府からCHIPS法に基づく57億ドルの補助金を受けたほか、総額89億ドルの出資を通じて政府が筆頭株主となった。加えて、エヌビディアが50億ドル、ソフトバンクグループが20億ドルを拠出し、AI開発での連携体制を構築する。
AI分野ではこれまで競合関係にあったエヌビディアとの提携が注目を集め、業界再編を促す可能性が指摘されている。

市場反応は良好も課題残す 今後の焦点は先端半導体

決算発表を受け、インテル株は時間外で7%上昇。東京市場でも半導体関連株が全面高となり、日経平均は658円高の4万9299円を記録した。
ただし、10〜12月期の売上見通し(128〜138億ドル)は慎重な内容で、市場の期待には届かなかった。先端半導体や生成AI向け製品で、競合のエヌビディアやAMDとの差を埋められるかが今後の焦点となる。
黒字転換は再建への第一歩であり、タンCEOが主導する改革がどこまで持続力を発揮できるかが問われている。

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