TDK、省電力AI半導体でエッジ活用を加速

井村 智規
经过

アナログ技術で高効率演算を実現

TDKは2日、北海道大学と共同開発した低消費電力型AI半導体を公開した。センサーが取得した信号をデジタル変換せずに処理できる点が特徴で、従来比で10倍を超える効率を達成した。試作チップは4ミリ四方の小型設計で、エッジ機器への搭載が容易になった。

脳の仕組みを取り入れた半導体構造

今回のチップは人間の小脳を模した回路設計に基づいている。単純な構造でありながら、リアルタイムにデータを学習・予測できる能力を備える。大規模データセンターに依存する従来型AIとは異なるアプローチであり、省エネ性を強みに持つ。

動きを予測するじゃんけん実演を公開

発表会では実証例として、センサーを装着した手の動きを予測する「じゃんけんシステム」が披露された。対戦相手の出す手を事前に予測し、勝つ選択肢を即座に表示する仕組みだ。特殊な指の組み合わせも追加学習し、柔軟な対応を可能とした。

エッジAI分野での幅広い応用を想定

TDKは、この半導体をエッジAIに特化して活用する構想を示した。ウェアラブル端末によるジェスチャー操作や産業用ロボットの異常検知など、リアルタイム処理を必要とする分野での利用が期待される。省電力で長時間稼働できる点も優位性とされる。

実用化と量産計画の見通し

同社は2028年を目標に量産体制の準備を進めると説明した。電子部品の分野で培ったアナログ技術を応用することで、新市場への展開を図る。エッジAI需要が拡大する中、省エネ半導体の存在感を高めることを目指している。

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