中国電拠出で進む鳥取の原子力防災体制強化

井村 智規
经过

隣接県としての原発リスク対応を整理

島根原子力発電所2号機の再稼働を巡り、原発が立地しない鳥取県の防災対応が新たな段階に入った。島根県との県境に近い米子市や境港市は、原発から半径30キロ圏内に含まれており、立地県と同様に事故時の影響を受ける地域とされてきた。これまで財政措置の在り方が課題となっていたが、中国電力の新たな拠出決定により対応環境が変化している。

中国電の新たな財政負担の内容

中国電力は2025年度に、鳥取県向けの安全対策費として約2億円規模を拠出する方針を示した。拠出額は、島根県側への核燃料税などの負担水準と、30キロ圏内人口の割合を踏まえて算定された。鳥取県側の対象人口は約6万8000人で、島根県側の約18%に相当するとされている。

補正予算成立と具体的な使途

鳥取県議会では、中国電力の負担金を歳入に組み込んだ令和7年度補正予算が可決、成立した。拠出金のうち一部は、米子市と境港市にそれぞれ配分され、原子力防災体制の整備に充てられる。再稼働後の監視体制強化に伴う人件費にも充当され、一般財源の負担軽減につながる構成となっている。

立地県との格差是正という位置付け

鳥取県はこれまで、原発が存在しないにもかかわらずリスクを共有しているとして、島根県との財源格差の是正を中国電力に求めてきた。今回の拠出は、こうした要望に対する具体的な対応として評価されている。原発隣接県への財源措置が明確化された点は、全国的にも注目を集めている。

協定締結に向けた今後の焦点

県は今後、拠出額が島根県側の負担変動に連動するかどうかを含め、制度の安定性を重視する姿勢を示している。議会での審議を経た上で、年内の協定締結を目指す方針だ。原子力防災を巡る自治体間の公平性確保が、今後の大きな論点となる。

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