日本の原潜導入論、周辺国の動向が引き金に

早瀬 涼真
经过

小泉防衛相が示した「環境変化」への危機感

小泉進次郎防衛相は11月6日のTBS番組で、日本の防衛戦略における原子力潜水艦導入の是非に言及した。発言の背景には、トランプ米大統領が韓国の原潜建造を承認した決定がある。小泉氏は「周辺国はすでに原潜を保有している」と述べ、安全保障環境が一段と厳しくなっていると強調した。

拡大する原潜保有国と日本の立場

中国とロシアは既に複数の原潜を配備し、北朝鮮も建造を進めている。さらに、韓国やオーストラリアも導入計画を進める中で、日本だけが非保有国であり続ける状況となっている。小泉氏はこうした現実を踏まえ、「議論の時期に来ている」と発言。防衛省内でも、長距離航行や長期潜行が可能な原潜の有用性が再評価されている。

ASEAN会議で浮上した日本製潜水艦への関心

小泉氏は、今月マレーシアで開催されたASEAN拡大国防相会議に出席した際、複数の国から日本製ディーゼル潜水艦への関心が寄せられたことを明かした。この動きは、日本の防衛技術が国際的に信頼を得ている証左とみられ、小泉氏は防衛装備移転をさらに推進する意向を示した。

国内で課題となる法制度と人材育成

日本では原子力基本法により、原子力の利用は平和目的に限定されている。原潜導入には法改正や運用体制の整備が不可欠であり、原子炉運用人材の育成という新たな課題も生じる。海上自衛隊内部では、「人員不足の中で原潜運用が可能か」との懸念が出ており、現場レベルでの調整も必要になる。

防衛政策の転換点としての原潜議論

小泉氏の発言は、日本の防衛政策が新たな段階に入ったことを示すものと受け止められている。原潜導入をめぐる議論は、技術・財政・法制度の整備を要する長期課題であり、国際社会との連携や説明責任も問われる。政府内では今後、現実的な選択肢としての検討が本格化するとみられる

この記事をシェア