政府が新たに銅を国家資源と位置付け
米大統領のトランプ氏は、銅の輸入品に対し50%の関税を課す意向を示し、発動日を8月1日と設定した。この政策は、国家経済の安全を確保するという新たな方針の一部であり、政権が銅を重要資源として再定義した結果である。導入の背景には、軍需や産業界での輸入依存を減らす戦略的判断がある。
軍事およびハイテク分野への影響が焦点に
銅は、従来の建設や電力用途に加え、最新兵器や情報通信分野での重要度が増している。特に、極超音速兵器、ミサイル防衛、レーダー通信といった最先端軍事技術には欠かせず、今後の開発競争での優位性確保が狙われている。また、半導体やデータセンターの冷却・伝導分野でも必須とされ、関税強化が米国内技術基盤の保護に直結する構図だ。
供給構造の再編に向けた第一歩
米国は現在、年間の精錬銅の約50%を海外からの輸入に頼っており、2024年には81万トンを調達している。主要な供給国はチリ、メキシコ、カナダであり、特に中南米諸国の経済には今回の関税が直接的な打撃を与える可能性が高い。政権は、輸入依存から脱却し、国内採掘・精錬能力の強化に舵を切る構えを明確にした。
関税強化が米国内市場に与える影響
追加関税によって、銅の価格上昇と需給逼迫が懸念される。すでに8日の段階で、COMEX銅先物価格が過去最高値を記録しており、市場では需給バランスの変動を織り込む動きが活発化している。産業界からは、製造コストの上昇や部品供給の遅延を懸念する声も出始めている。今後、米国内のインフラや自動車産業など広範な領域に波及する可能性がある。
通商政策の軸足が「防衛」に移行
これまでの鉄鋼や自動車関税と異なり、今回の銅関税は安全保障に重きを置いた構造が特徴的だ。ラトニック商務長官も「単なる貿易保護ではなく、国家存続にかかわる問題」と述べており、経済と安全保障を結びつけた通商戦略への転換が進んでいる。今後は、銅以外の戦略物資への拡大も予想され、通商政策の地殻変動が続く見通しである。