中国の台頭を警戒 海底通信網で日本が主導強化

井村 智規
经过

海底通信インフラが国家戦略の中核に浮上

経済産業省は、国際通信の根幹を成す海底ケーブルを「重要技術」として公式に認定し、今後の技術開発・事業支援における優先対象とした。これにより、日本政府は地政学的リスクの高まりを受け、情報インフラの保全と強化に本格的に乗り出す構えを見せた。

通信の大動脈を担う海底ケーブルの実態

現在、日本を含む世界の通信の大半は、海底に敷設された光ファイバーによって支えられている。その数はおよそ500系統、全体の総延長は150万キロメートルを超える。通信の安定性や高速性において欠かせない設備であり、インターネットや金融、外交情報の基盤として重要性が高まっている。

シェア競争で中国が8%まで拡大

これまで市場は主にNEC(日本)、サブコム(米国)、アルカテル(フランス)といった企業が主導してきた。NECは現在、世界シェアの21%を持ち、技術力では高い評価を得ている。一方で、中国企業が着実に進出を拡大しており、累計敷設距離ベースで8%にまで伸びた。中国勢は国家的な資金投入と安価な製品でシェアを奪っている。

敷設船不足と更新ラッシュへの懸念

海底ケーブルは導入から平均17~25年で更新される。近年では交換時期を迎える案件が増え、施工能力の逼迫が深刻化している。特に敷設船の保有数が限られており、国際的な競争力の維持には、日本独自の施工体制の確保が求められている。

国内技術の保護と支援体制の構築を強化

経産省は敷設船や設計技術の国内確保に加え、海外展開も視野に入れた支援策を展開する予定だ。これにより、日本が有する高度な光通信技術と施工能力を国際市場で活用し、中国勢との競争に備える。国家主導の技術防衛体制の構築が急務となっている。

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