米利回り低下と金急騰、緩和シナリオに市場が反応

井村 智規
经过

利下げ観測が再び強まる展開に

7月16日に発表された6月の米小売統計は、前月比で横ばいという結果ながら、市場の予想よりも堅調だった。これを受けて、景気の減速懸念はやや後退したが、連邦準備理事会(FRB)の年内利下げ期待は維持された。

FRBのクーグラー理事による「インフレは鈍化傾向にある」との発言が後押しとなり、ディスインフレ環境の継続が意識された。市場では、景気の底堅さと物価抑制の両立が可能になるとの見方が広がりつつある。

国債利回りが軒並み下落、3月以来の水準に

米国債市場では長短ともに利回りが下落し、10年債は4.167%、2年債は一時4.409%を記録した。投資家の間では、利下げ開始が近いとの見方が一段と強まっている。

金融市場では、トランプ氏の再選の可能性が高まっていることが新たな材料となっている。インフレ率への影響を見極めつつ、FRBの舵取りが注目される局面にある。

金市場が急騰、インフレヘッジとして買い集まる

金先物価格は前日比38.90ドル高の1オンス=2,467.80ドルとなり、史上最高値を更新した。利下げ観測の強まりと共に、実質金利の低下を背景に金への資金流入が顕著になっている。

特に、FRBが政策緩和に転じる場合、安全資産としての金の魅力が再評価されるとの見方がある。市場では、今後の指標発表やFRB高官の発言が引き続き注目されている。

為替市場ではドルが上昇、円安基調続く

ドルは主要通貨に対して上昇し、ドル指数は104.31を記録。円相場ではドル/円が158.46円まで上昇し、再び円安トレンドが強まっている。これは日米の金融政策の方向性の違いを反映しているとされる。

また、暗号資産も小幅に値を戻しており、トランプ前大統領の政策に対する市場の期待が背景にあるとみられる。

中国経済への不安広がり、WTI原油が下落続く

一方で、原油市場は中国の景気減速懸念を受けて軟調に推移した。WTI8月物は1.15ドル安の80.76ドルとなり、3営業日連続の下落となった。9月物も79.71ドルまで値を下げた。

需要の先行き不透明感が価格を押し下げる中、エネルギー市場では慎重な姿勢が広がっている。中国の経済対策次第では、今後の原油価格に影響を与える可能性がある。

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