年間最多更新に至った背景整理
日本政府観光局が公表した統計によると、2025年1~11月の訪日外国人客数は3906万5600人に達し、これまで最多だった前年通年実績を11月時点で上回った。円安基調が続く中、日本の旅行費用の割安感が高まり、アジアのみならず欧米や中東からの来訪が拡大したことが背景にある。新型コロナ禍後の国際移動回復が定着し、訪日需要が本格的な成長局面に入った形だ。
国・地域別動向に見る構造変化
1~11月の累計では、中国が876万5800人で最多となり、韓国が848万5300人、台湾が617万5000人と続いた。中国は人数では首位を維持したものの、他地域との差は縮小している。米国や欧州、オーストラリア、中東諸国などの伸びが顕著で、訪日客の構成は従来より分散する傾向が明確になっている。
中国市場で顕在化した伸び鈍化
11月単月の訪日客数は351万8000人と11月として過去最多を記録したが、中国からの来訪者は56万2600人にとどまった。前年同月比の伸び率は**3.0%**と、9月や10月から大きく低下している。中国政府が日本渡航への警戒を呼びかけた影響が数字に表れた形で、中国市場への依存リスクが改めて浮き彫りになった。
観光行政が示す対応方針
観光庁の村田茂樹長官は、欧米豪や中東の堅調な需要を評価しつつ、中国動向については「状況を注視する」と述べた。中国客減少に伴う宿泊価格の変動については、現時点で公式なデータは把握していないと説明している。観光庁としては、特定市場への依存を避けるため、地域別・市場別の戦略的な誘客施策を進める姿勢を示している。
市場多様化と今後の観光政策
政府は2030年に訪日客数6000万人という目標を掲げており、地方への分散誘客が重要課題となっている。訪日客増加が続く一方、都市部ではオーバーツーリズムへの対応も求められている。量的拡大と質的向上の両立が、今後の観光政策の焦点となる。
