競馬収益を農業基盤強化に充当する新制度を検討

笠原 美琴
经过

農水省が示した財源再配分の方向性

農林水産省は、農業政策の財源確保に向け、日本中央競馬会が積み立ててきた資金の一部を農業分野へ回す制度設計に入った。政府が掲げる農業構造の再編期間にあわせて制度を運用する構想であり、農地の集約化や新技術の導入に必要な資金を安定的に確保する狙いがある。省内では、来年の通常国会に関連法案を提出する工程が示され、関係部会への説明も始まった。

競馬事業の積立金を財源に組み入れる措置

今回の検討では、競馬事業で得られた収益のうち、JRAが国へ納付した後に積み立てている資金を、特例的に農業政策へ振り向ける方式が軸となる。JRAは農林水産省所管の特殊法人であり、売り上げや利益の一定割合は国庫に納付されている。これまでは畜産政策や福祉分野に資金が使われてきたが、新たに農業基盤強化のための財源として組み込む方針が提示された。具体的な金額は今後詰められるが、過去にも国の財政運営や農業支援を目的に追加納付を実施した前例がある。

構造転換期間に向けた政策の位置づけ

政府は2025年度から2029年度を農業構造転換の集中対策期間として位置づけている。この期間中は、農業経営の大規模化や農地の集約化を進め、生産体制の安定化を図る。さらに、ドローンや人工知能を活用したスマート農業の普及、農産物の海外展開の加速といった取り組みも並行して進められる。事業規模が巨額となるため、既存の予算に加えて新たな財源を確保することが不可欠とされ、競馬収益の活用が検討の俎上に載った。

増加傾向が続く競馬売り上げの背景

JRAの売り上げは近年堅調に推移している。2024年の売り上げは3兆3428億円で前年比1.4%の増加となり、13年連続のプラスを記録した。特にインターネットを通じた馬券購入が一般化し、外出自粛で収益が一時落ち込んだ時期を経ても、利用者数は回復傾向を示している。この収益性の高さが政策財源として活用しやすい要因とされ、農業分野への資金投入の根拠となっている。

今後の調整と制度設計の焦点

農林水産省は来年の通常国会での法案提出を目標に、制度の最終調整を進める。積立金の取り崩し方法や追加納付の枠組み、農業施策への運用方法など、詳細な制度設計が焦点となる。農業の収益力向上や食料安全保障の強化を進めるため、新たな財源確保が不可欠とされており、競馬収益を活用した仕組みがどのように形づくられるか注目される。

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