EU、2035年車規制を修正 エンジン車存続に道

宇津木 柊
经过

規制方針転換の背景が判明

欧州連合(EU)は16日、2035年以降にエンジン車の新車販売を原則禁止するとしてきた規制方針を見直すと明らかにした。これまでの全面的な禁止路線を修正し、一定条件を満たす車両については販売継続を可能とする内容で、事実上の政策転換となる。気候変動対策を主導してきたEUの自動車政策が、大きな節目を迎えた。

CO2削減条件付きで販売容認

新たな枠組みでは、自動車メーカーに対し、自社が販売する新車全体の走行時CO2排出量を平均で90%削減することを求める。この基準を達成すれば、ガソリン車やハイブリッド車(HV)の新車販売が2035年以降も認められる。排出量を完全にゼロとする従来案から、数値目標を緩和した形となる。

EV普及の遅れが政策修正を促進

EUは当初、エンジン車の販売禁止によって電気自動車(EV)への急速な移行を想定していた。しかし、欧州市場でのEVの新車販売比率は現在16%にとどまり、当初の想定を大きく下回っている。消費者負担や充電インフラ整備の遅れもあり、単純な規制強化だけでは普及が進まない現実が浮き彫りとなった。

自動車産業保護と加盟国の要望

ドイツをはじめとする自動車産業の比重が高い国々や、欧州自動車工業会など業界団体は、雇用や競争力への影響を懸念し、規制緩和を求めてきた。今回の見直しは、こうした声を反映したもので、域内産業の持続性を重視する姿勢が明確になった。

今後の制度確定に向けた課題

今回の方針は欧州委員会の決定であり、最終的には加盟国および欧州議会の承認が必要となる。電動化投資の減速を懸念する反対論も存在し、調整は容易ではない。EUの環境政策と産業政策のバランスが、今後の焦点となる。

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