無印通販再開とアスクル売上急減が浮き彫りにした課題

井村 智規
经过

システム停止の背景が判明

アスクルが受けたサイバー攻撃は、物流と受注処理の根幹を支えるシステムの停止を引き起こした。10月19日のランサムウエア侵入により主要業務が中断され、法人・個人向け双方のサービスが長期間にわたり機能しなかった。この攻撃は幅広い事業領域に影響し、各部門で復旧作業が進んだものの、完全な再開には時間を要する状況が続いている。攻撃の範囲と影響度の大きさが明確になった。

法人向け事業縮小の実態が発表

法人向け「アスクル」事業は、11月の売上高が17億円と大幅に縮小し、前年同月比で約95%の減少となった。通常業務がほぼ停止した影響で多くの企業が調達ルートを確保できず、必需物資の入手に支障が生じた。物流拠点の稼働停止が長期化したことで、企業間取引の減少が一層進み、事業収益の低下が避けられない状況となった。稼働率の低下が数字として明確に表れた形となる。

個人向け通販の停止が発表

個人向け「ロハコ」は売上が約300万円にとどまり、事業の大部分が動いていない。12月1日時点でも受注は停止されたままで、再開に向けた調整が続いている。日用品を中心とした取扱商品の多くが提供できない状態となり、利用者は代替手段を探さざるを得ない状況に置かれた。個人需要の縮小が直ちに売上減へつながり、事業全体の回復に時間を要する見通しとなった。

決算作業に遅れが生じた要因

アスクルは12月15日に予定していた決算発表を延期した。原因は業務停止に伴うデータ収集の遅延で、通常の手順での確認作業が難しくなったためである。業務の停滞が会計処理にも波及し、企業としての情報整備が遅れを来した。営業再開が部分的である中、正確な業績把握には追加の期間が必要となった。

無印通販の一部再開が示す状況

アスクルのグループ会社が提供する基盤を利用していた無印良品の通販サイトは、10月19日の停止以降、閲覧と購入機能が使えない状態が続いていた。12月1日に安全性が確認され、一部商品の注文受付が再開された。大型家具など限定的な取り扱いにとどまるものの、段階的な正常化が進んでいる。全面再開は12月中旬を目標とし、今回の事案が複数の小売サービスへ影響した点が注目された。

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