エア・ウォーターが決算延期と統治改革を同時進行へ

宇津木 柊
经过

半期報告書提出期限の再設定を巡る動きが判明

産業ガス大手エア・ウォーターが11月13日、半期報告書の提出期限延長に向けた申請を進めていることが明らかになった。本来14日が期限となっていたが、子会社を中心に不適切な会計処理が見つかり、調査の継続が不可避となったことが理由となる。問題が確認されたのは日本ヘリウムなどの関連会社で、損失処理の後送りなど複数の案件が影響を与えている。現時点での影響額は約25億円に達しており、外部弁護士らが加わる調査組織が事実関係の解明を進めている。提出期限が延びる場合、決算発表も新たな日程に合わせて実施することになる。

会計問題発覚に伴う決算発表日変更の影響が焦点

同社は当初、2025年9月中間決算を11月14日に公表する予定だったが、関連資料の検証を優先させるため発表を見送った。決算における信頼性確保の観点から、問題の全容把握が欠かせないと判断したとみられる。不適切処理の確認は10月に公表されており、そこから調査項目が増加する可能性も指摘されている。調査組織は外部の弁護士が主導し、同社は第三者の視点を取り入れることで報告内容の正確性を担保しようとしている。決算発表の延期は市場関係者にとっても関心が高く、調査期間の長期化が株主や投資家に与える影響が注目される。

配当維持の判断と企業方針の位置付けが進展

エア・ウォーターは同日、2026年3月期の中間配当を従来見込みの37円50銭で実施する方針を示した。この決定は会計問題とは切り離し、株主還元の安定性を重視した判断とされる。現時点で問題の影響額は特定範囲に収まっており、財務上の大幅な修正を要する状況にはないとの見立てが背景にある。配当政策の維持は市場の不安を和らげる要素となる可能性があるが、今後の調査の進展次第では見通しが変化する余地も残る。企業としては調査の透明化と財務の安定性の両立が課題となる。

統治改革に向け経営改革委員会を正式に設置が発表

同社は不適切会計問題の発生を受け、経営管理体制を見直すための経営改革委員会を13日付で立ち上げた。この委員会には社外有識者や役員が参加し、統治体制の再構築を議論する場として機能する。内部統制の運用状況や管理プロセスの改善などが審議対象となり、企業としての透明性向上を図る位置付けとなる。不正会計の要因分析や体制の弱点抽出も委員会の役割に含まれており、社外の視点を取り入れることで実効性の高い改革を期待している。企業信頼の回復に向けた取り組みとして、社内外から注目される動きとなっている。

調査継続による最終報告時期と改善策策定が焦点

特別調査委員会の調査は現在も続いており、今後は不正の範囲や原因を明確にする作業が本格化する。現段階では4案件で約25億円の影響が確認されているが、調査完了まで追加の確認が必要となる見通しだ。提出期限延長が認められた場合、半期報告書と決算発表は2026年2月13日までに行われる計画となる。会社側は経営改革委員会の議論と並行して再発防止策をまとめる方針を掲げており、統治体制の強化がどこまで具体化するかが今後の焦点となる。信頼回復には透明性確保が重要な要素となり、調査結果の公表時期にも関心が集まる。

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