海外事業の苦戦で業績悪化
資生堂は10日、2025年12月期の連結純損益が520億円の赤字となる見通しを示した。従来予想していた60億円の黒字から一転し、海外事業の低迷が明確になった。特に、米国市場での販売不振が収益を圧迫し、企業全体の利益構造を揺るがせている。
9か月決算で439億円の赤字
同社が発表した1〜9月期の連結決算では、売上高6938億円（前年同期比4％減）、最終損益439億円の赤字を計上。米国傘下の「ドランク エレファント」ブランドの不振によって460億円超の損失を計上した。米市場でのブランド競争激化により、顧客層の固定化に課題を残している。
訪日消費の勢いに陰り
国内でも、訪日外国人の購買意欲の減退が収益を圧迫した。円安基調にもかかわらず、高価格帯コスメの売れ行きが鈍化し、観光需要頼みの構造がリスクとして浮き彫りになった。今後は国内外での市場多様化が求められる。
希望退職制度を実施し30億円を計上
資生堂は経営体質の強化を目的に、200人規模の希望退職募集を実施する。対象は本社および国内の一部子会社で、関連費用約30億円を見込む。同社はこれを「グループ再構築の一環」と位置づけ、人件費の最適化とブランドポートフォリオの再整備を進める構えだ。
社長「投資の規律と成長の両立を」
藤原憲太郎社長は決算発表の場で、「ブランドの方向性が曖昧になっており、顧客との接点を再設計する必要がある」と強調。「無秩序な投資ではなく、持続的成長に資する改革を進めたい」と述べた。経営陣は構造改革を通じて、国際競争力の回復を急ぐ方針を示している。
