サイバー攻撃被害のアスクル、全国7拠点で出荷再開拡大

井村 智規
经过

サービス停止から復旧へ向けた道のり

通販大手アスクルは、10月19日に発生したサイバー攻撃でシステムが麻痺し、法人向けおよび個人向け通販事業が停止していた。攻撃の原因はランサムウェアによるもので、ロシア系のハッカー集団が関与したとされる。同社は被害確認後、全システムを停止し、復旧作業と安全確認を最優先に進めてきた。

試験出荷から本格再開への段階的対応

10月末からコピー用紙や日用品など37品目の試験出荷を開始。システムの安定を確認した上で、11月12日からは出荷対象を237品目に拡大する計画を明らかにした。物流拠点も東京・大阪の2拠点から仙台、福岡などを含む7拠点体制へと広げ、業務再開の準備を進めている。

法人向け通販サイトの再開時期を公表

アスクルは、法人向け通販サイト「ASKUL」を12月上旬にも通常運営に戻す方針を示した。これにより、これまでファクス注文に限定されていた法人顧客が再びウェブ経由での注文を行えるようになる。あわせて、企業向け一括購入サービス「ソロエルアリーナ」も11月中に再開予定である。

他社への影響と個人向けサービスの課題

アスクルの物流子会社が担っていた無印良品など他社のオンライン販売も一時停止しており、被害の波及は広範囲に及んだ。法人サービスが再開する一方、個人向け通販「LOHACO」の再開見通しは立っていない。今後の安全確認とシステム改修の進展が再開時期を左右するとみられる。

企業サイバー防衛の課題浮き彫りに

今回の事件は、物流を含む企業の基幹インフラがサイバー攻撃の標的になり得る現実を示した。アスクルは再発防止のため、セキュリティ基盤の強化や監視体制の見直しを進める方針を明らかにしている。日本企業にとって、今後の防衛策強化が喫緊の課題となっている。

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