4社揃ってギフト削減が判明
年末の贈答シーズンを前に、ビール大手4社が一斉に歳暮商品の縮小に踏み切った。きっかけとなったのはアサヒグループホールディングスが受けたサイバー攻撃である。システム障害による出荷遅延が他社への需要集中を招き、結果として全社が供給制限を強いられる事態となった。
キリンビールは17種類あった歳暮用セットを3種類に減らす。消費者の注文が想定を超え、生産現場の負荷が高まったためだ。
キリンの対応、定番商品の確保を重視
キリンは「一番搾り生ビールセット」の3種類のみを継続販売とし、その他の「晴れ風」「ラガービール」「ファミリーセット」などを休売にした。既に受注済みの分は供給する方針だが、新規受注は停止している。
同社は「消費者への安定供給を守るための判断」としており、出荷体制の維持に注力する姿勢を示した。
アサヒ障害、サプライチェーン全体に影響
アサヒGHDでは9月下旬に発生したランサムウエア攻撃が発端となり、受注や出荷システムが混乱。復旧まで時間を要し、流通全体に遅れが広がっている。昨年は42種類のギフトを展開していたが、今年は「スーパードライ」3種類に限定。歳暮商戦への影響は避けられない。
一連の障害により、流通各社は「代替ブランドの確保」を急ぐが、業界全体で供給制約が続く状況だ。
他社も相次ぎ販売制限
サントリーは「プレミアムモルツ」の冬季限定商品を含む13種類のギフトを休売し、サッポロビールも「エビス」や「黒ラベル」計10種類を停止。ビール大手4社すべてが歳暮商材を削減するのは異例であり、小売りや百貨店では「品ぞろえが一気に細った」との声も出ている。
贈答用ビール市場では、前年に比べて供給量が大幅に落ち込む見通しだ。
デジタル依存の脆弱性が露呈
今回の問題は、製造・流通業が依存するデジタル基盤の脆弱性を改めて示した。サイバー攻撃が一企業の問題にとどまらず、業界全体の供給網に影響を与える構造が明らかになった形だ。
ビール各社は今後、ITシステムの多重化や緊急時対応の強化を迫られるとみられる。歳暮商戦の混乱は、サイバーセキュリティ強化の必要性を浮き彫りにした。
