アサヒ、ビール全工場で部分稼働再開 被害は長期化

早瀬 涼真
经过

サイバー攻撃で業務麻痺、復旧は限定的

アサヒグループホールディングスで9月29日に発生したサイバー攻撃によるシステム障害は、10月6日時点でも全面的な復旧には至っていない。受注・出荷システムが停止し、物流やコールセンター業務も混乱が続いている。
同社は障害の原因を身代金要求型ウイルス(ランサムウェア)と断定し、外部専門機関と協力して復旧作業を進めているが、通常業務再開の目途は立っていない。

全6ビール工場で限定的に生産再開

障害発生後、一時停止していたビール部門では、国内全6工場で一部生産を再開した。主力商品の「スーパードライ」を中心に生産を絞り込み、手作業による受注分を出荷している。
アサヒ飲料では7工場のうち北陸工場と明石工場で稼働を再開し、他の工場も今後の出荷状況に応じて順次再開を進める方針だ。

他社製品への需要集中、供給に影響

システム障害の余波で、アサヒ製品の供給が滞る中、キリン、サントリー、サッポロの3社に発注が殺到している。各社は業務用ビールの出荷を調整する事態となっており、ビール業界全体に需給の歪みが広がりつつある。
外食産業など販売先からの急な発注変更にも対応が求められ、各社は供給体制の維持に追われている。

新商品発売を延期、販売計画に支障

アサヒはシステム障害の影響で、10月に予定していた新商品の発売を延期した。延期対象には「アサヒスーパードライ 伊勢神宮式年遷宮ラベル」や「シングルモルト宮城峡10年」などが含まれる。
また、グループ食品や飲料の12製品の発売延期も既に発表しており、販売戦略全体への影響が避けられない状況となっている。

通信障害も一部解消、情報流出の調査続く

一時的に社外メールの受信が不可能となっていたが、一部システムが復旧した。アサヒは情報漏えいの痕跡を確認しており、内容や範囲の特定を進めている。
完全復旧にはなお時間を要する見通しで、業務全般の安定化は年内にずれ込む可能性がある。

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