開発者の権利めぐる論争 アップルが制裁に反撃

笠原 美琴
经过

EUによる規制強化にアップルが真っ向対立

欧州委員会による制裁決定に対し、アップルは法廷の場で真っ向から争う姿勢を取った。7月7日、同社はルクセンブルクのEU一般裁判所に提訴し、DMA違反との指摘を全面的に退けた。論点となっているのは、アプリ配信をめぐるアップルのビジネスモデルが市場競争を妨げる構造か否かである。

制裁金は過大か アップルの主張と背景

欧州委が課した制裁金は5億ユーロに達し、DMAの運用開始以降では最も高額な罰金となった。委員会は、アップルが自社以外の配信経路を排除したことで、公正な市場競争が著しく損なわれたと指摘。一方アップル側は、これらの制限は利用者の安全を守るための措置であり、科された金額も過剰だと主張している。

アプリ開発者とユーザーへの影響を懸念

アップルは声明の中で、欧州委の決定がアプリ開発者のビジネス環境に混乱を招くと強調。加えて、ユーザーに対しても、サービス品質や利便性の低下という形で悪影響が生じると警鐘を鳴らした。規制によってアプリの流通経路が複雑化すれば、結果的に消費者の選択肢を狭める事態にもなり得ると訴えている。

規制の正当性と適用範囲に新たな焦点

デジタル市場法は2023年3月に施行され、IT大手に対して外部課金や取引の公平性確保を義務づけている。今回の提訴を機に、同法の運用基準や介入の妥当性について、再検討の機運が高まる可能性がある。特に規制が「市場の健全化」と「企業活動の制限」のどこで線引きされるかが焦点となっている。

他のテック企業への波及と国際的影響

アップルの反発は、今後他の巨大プラットフォーム企業にも影響を与える公算が大きい。すでにメタも同様の制裁対象となっており、DMAの枠組みをめぐる企業とEU当局の対立構造が顕在化しつつある。欧州域内にとどまらず、世界のIT政策にも波及する可能性がある今回の動向は、業界全体の規制バランスに大きな一石を投じている。

この記事をシェア