事業構造再編の動きが判明
パナソニックエナジーは、電気自動車分野の伸び悩みが続く中で、AIデータセンター向け電源事業への転換を加速させている。生成AIの普及で世界的にデータセンターの新設が相次ぎ、これに伴う電源装置需要が急増している。こうした環境変化を受け、2028年度の売上目標として8,000億円規模を掲げ、収益基盤を再構築する姿勢を示した。23年のAIサーバー市場は520億ドル規模とされ、28年には4倍以上まで拡大すると予測されており、同社はこの成長を取り込むべく体制強化を図っている。
技術優位を生かした供給戦略を発表
AIサーバーは演算負荷の増減が激しく、電源には高い出力性能と安定性が求められる。パナソニックエナジーはセル、モジュール、電源ユニットを一体で開発できる特徴を持ち、北米の大手事業者を中心にバックアップ電源を供給してきた。同社が展開する分散配置型の電源システムは世界市場で高いシェアを有しており、停電時の緊急電源やピーク負荷軽減など複数のニーズに応える。生成AI施設が増える中、この技術的優位性をもとに供給規模をさらに広げる方針が示された。
EV向けラインを中心とした編成転換が進展
世界的に補助政策の見直しが進み、金利上昇も重なり、EV市場は需要停滞が続いている。同社は生産能力の過剰感が高まる車載電池向けのラインを活用し、データセンター向け生産へ振り向ける体制を整えつつある。国内工場に加え、米カンザス州の電池工場でも一部ラインを転用し、26年度初めから本格的な生産を始める計画だ。これにより、EV依存の収益構造からの脱却を図りつつ、成長が見込まれるAIサーバー分野の需要に切れ目なく対応する。
海外拠点の生産強化が加速と発表
メキシコではモジュール組立が進んでおり、既存ラインの強化に加えて新設も検討されている。北米への供給量を増やすことで、関税の影響を抑えながらリードタイムを短縮する狙いがある。AIデータセンターが北米で集中的に建設される見通しが強まる中、供給源の現地化を進めることで競争力を確保する構図が鮮明になりつつある。セル生産は日本での拡充が進み、28年度には25年度比で3倍の規模まで増強される計画だ。
売上動向と投資計画の現状が明確化
投資家向け説明会で、只信一生社長はデータセンター向け売上が今年度2,000億円台後半に達する見通しを示した。設備投資は既存資産を中心に活用し、3桁億円前半の範囲に収まるとの見方を示した。固定費増加の懸念は小さく、営業利益率15.8％を維持した上で上積みを狙う姿勢を強調した。AI関連インフラは成長分野として注目されており、同社はこの領域を新たな軸とする事業転換を進める構えだ。
