金融再編で銀行事業を前面に押し出す動き
NTTドコモは、金融サービスを統括する新たな持ち株会社として「NTTドコモ・フィナンシャルグループ」を発足させ、銀行や証券などの事業を一体的に展開する体制を整えた。これにより、通信、決済、証券、銀行を組み合わせたサービス提供を進める方針である。
同社は2024年にマネックス証券を子会社化し、さらに去年は住信SBIネット銀行を傘下に収めるなど、金融領域の拡大を続けてきた。今回の再編は、これまで個別に強化してきた金融サービスをグループ全体で連動させる狙いがある。
通信事業の成長が鈍る中、金融は顧客との接点を広げる重要な分野となっている。ドコモは銀行機能を前面に出すことで、携帯電話の契約者だけでなく、資産形成や日常の支払いに関心を持つ利用者との関係を深める考えだ。
店舗網を生かした手続き支援を段階的に拡充
ドコモは、全国のドコモショップを活用し、銀行サービスの利用を支援する体制を広げる。8月からは、銀行業務に関するライセンスを取得した一部店舗で、スタッフが口座開設や預金に関する手続きを手助けできるようにする。
店舗での対応は、ネットだけで銀行手続きを完結することに不安を持つ利用者にとって重要な接点となる。スマートフォンやアプリの操作に慣れていない層でも、対面で説明を受けながら手続きを進められる点が特徴である。
ドコモ・フィナンシャルグループは、2030年度までに有人店舗を1500店に広げる計画を示している。このうち150店では住宅ローンも取り扱う予定で、今年度中にも1000店が開設される見込みとされている。
AI活用で生活に沿う金融提案を強化へ
デジタル面では、AIを使った金融サービスの強化が柱となる。日々の支払いや貯蓄に関する情報をもとに、利用者ごとに合った提案を行うサービスを想定している。
通信事業で蓄積してきた顧客の生活情報や関心に関するデータを活用し、人生設計に沿った金融商品の提案につなげる構想もある。銀行、証券、決済のサービスを横断的に組み合わせることで、利用者が必要なサービスにアクセスしやすい仕組みを目指す。
NTTドコモ・フィナンシャルグループの廣井孝史社長は、店舗での接点とAIによるデジタル支援を組み合わせ、生活者の目線に立った金融サービスを実現する考えを示した。対面の安心感とデジタルの利便性を両立できるかが、今後の展開で重要となる。
携帯各社の経済圏競争がさらに激化する構図
携帯大手の間では、通信と金融を組み合わせた顧客囲い込みがすでに進んでいる。KDDI、ソフトバンク、楽天グループはいずれもグループ内に銀行を持ち、決済やポイント、金融商品を連携させた経済圏を形成している。
ドコモはこの分野で最後発と位置づけられるが、既存の通信契約者や全国の店舗網を活用できる強みがある。銀行ブランドを「ドコモの銀行」として打ち出し、dポイントの還元施策も順次始めることで、利用者をグループ内サービスに誘導する狙いがある。
一方で、競争相手もすでに金融サービスの利用基盤を広げており、単に銀行を持つだけでは差別化は難しい。ドコモには、対面支援、AI提案、ポイント還元を組み合わせた独自性を示すことが求められる。
対面とデジタル融合の成否が今後の焦点に
ドコモの金融事業本格化は、通信会社が生活インフラとしての役割を広げる動きの一環である。携帯電話の契約だけでなく、決済、貯蓄、投資、ローンまでを同じ経済圏で扱うことで、顧客との関係を長期化させる狙いがある。
ただし、利用者にとって重要なのは、サービス名やグループ再編そのものではなく、手続きの分かりやすさや利便性である。店舗での支援が十分に機能し、AIによる提案が利用者の実情に合う内容となるかが問われる。
ドコモは金融持ち株会社の設立により、銀行事業を通信事業と並ぶ成長領域として明確に位置づけた。携帯大手各社の金融競争が強まる中、店舗とデジタルをどう結びつけるかが、ドコモの経済圏拡大を左右する。
