フランスで大型AI拠点を整備
ソフトバンクグループは5月31日、フランスで人工知能向けの大規模データセンター事業に着手すると発表した。計画全体の投資額は最大750億ユーロ、日本円で約14兆円に上る。受電容量は最終的に5ギガワット超を見込み、同社にとって欧州初のAI向けデータセンター事業となる。
今回の事業は、AIの開発や運用に必要な計算資源を欧州で確保する取り組みである。生成AIや高度なデータ処理には大量の電力と演算能力が必要となるため、データセンターの規模は競争力に直結する。ソフトバンクグループは物理的なインフラの整備を通じ、AI関連事業の基盤を広げる方針を示した。
第1段階で3.1ギガワット確保
計画は段階的に進められる。第1段階では約450億ユーロを投じ、フランス北部のオー=ド=フランス地域圏にデータセンター拠点を整備する。予定地にはダンケルクやル・ボスケルなどが挙がっている。
初期稼働は2028年を予定し、2031年までに受電容量3.1ギガワットのAIデータセンターを稼働させる計画である。その後、追加投資によって全体の容量を5ギガワット規模まで拡大する。フランス国内に限らず、周辺国にもサービスを提供できる体制を整える。
欧州の計算資源確保が狙い
今回の投資は、AIに必要な計算資源を欧州市場にも確保する狙いがある。現在、AI関連の計算基盤は米国に集中しており、欧州では大規模な処理能力の整備が課題となっていた。ソフトバンクグループは、フランスでの拠点構築により、欧州のAIインフラ拡充に関与する。
フランスは原子力発電を活用した安定的な電力供給を持つ。データセンターは大量の電力を消費するため、電力の安定性は立地選定の重要な要素となる。今回の計画では、こうした電力基盤を背景に、大規模なAI計算環境を構築する。
自社利用と外部提供を想定
ソフトバンクグループは、米国のAI開発企業であるオープンAIに出資するなど、AI分野への投資を進めている。今回のフランスでのデータセンター建設は、AI関連インフラへの資本投下の一環と位置付けられる。資金投資だけでなく、計算能力そのものを確保する動きとなる。
整備される計算基盤は、自社グループでの活用にとどまらない。欧州地域のAIスタートアップ企業にも提供する計画が示されている。個人情報保護やデジタル関連規制が整備される欧州において、現地で利用可能なAI計算資源の確保は、開発環境の整備にもつながる。
AI基盤整備をめぐる競争が本格化
孫正義会長兼社長は、AIが新たな段階に入り、インフラを構築する国々がテクノロジーと社会の将来を形づくるとの趣旨を示した。今回の発表は、AIサービスの開発だけでなく、それを支える電力と計算設備の重要性を示すものとなった。
米国の巨大IT企業がAI基盤整備に多額の資金を投じる中、日本企業であるソフトバンクグループが欧州で大型インフラを構築する。フランスでの計画は、AIを支える計算基盤の地域分散と、欧州におけるAI産業の拡大をめぐる動きの一つとなる。
