国内茶葉を守る新方針を発表
伊藤園は5月12日、「お〜いお茶」ブランドで国産茶葉のみを使う取り組みを進めると発表した。5月18日出荷分から、商品の包装に「純国産茶葉100%」と記載する。国内外で茶葉市場の構造が変わる中、同社は原料の産地を明確にし、主力商品の品質と信頼を消費者に示す。
今回の方針は、緑茶飲料の原料調達に関する姿勢を明確にするものだ。茶葉価格が高騰する中でも、海外産原料に切り替えるのではなく、国内産地との連携を強める。志田光正マーケティング本部長は、日本茶を日本人の誇りとなる存在にしたいとの考えを示した。
輸出拡大の一方で生産基盤が縮小
世界的な抹茶人気を背景に、日本茶の海外需要は大きく伸びている。伊藤園の説明では、日本茶の輸出量はこの20年間で約11倍に増加し、抹茶の原料となる碾茶の生産量も約4.5倍となった。海外での需要拡大は成長機会である一方、国内の生産現場には負担も生じている。
国内のお茶生産量は約30%減り、茶農家の戸数も約65%減少した。抹茶向け原料の需要が強まる中、煎茶向けの生産が十分に確保しにくくなる状況もある。伊藤園は、国内需要を海外産茶葉で補う動きが広がることに警戒感を示している。
中国産茶葉の存在感が強まる現状
日本の茶生産量は約7万トン、輸出量は約1.2万トンとされる。これに対し、中国の生産量は約300万トン、輸出量は約30万トンに上る。規模の差は大きく、海外産茶葉の流入が国内市場に与える影響は小さくない。
2025年の緑茶輸出量は1万2612トンと過去最高を記録したが、輸入量も前年比5割増の4610トンに増えた。今年は中国などからの茶葉輸入が前年の2倍超のペースで進んでいる。過去には、中国で製造・販売された茶に「宇治」を含む商標が使われた事例もあり、産地表示の在り方が問われている。
産地育成事業で栽培面積を拡大
伊藤園は、新茶産地育成事業として契約農家の栽培面積を広げる。現在の契約農家の栽培総面積は2648ヘクタールで、5年後には2800ヘクタールまで増やす計画だ。国内産地を支えることで、国産茶葉の継続的な調達につなげる。
さらに、抹茶向けと煎茶向けを加工段階で切り替えられる生産ラインの導入も推進する。需要が変化しても柔軟に対応できる体制を整え、供給の安定を図る。鹿児島県志布志市の契約茶農家からは、価格高騰や将来不安がある中で、今後の方向性が示されたとの受け止めが示された。
消費者に分かりやすい表示へ転換
伊藤園は、「国産」と表示される商品の中にも、茶エキスや粉末、抽出物などを使用したものや、原産国が分かりにくいものがあると指摘している。このため、同社は国内で栽培・加工された茶を分かりやすく示すことを重視する。地域ブランドを国が保護する地理的表示保護制度に「日本茶」を加える動きも進んでいる。
発表会では、有村架純さんが日本茶文化の継承に期待を示した。伊藤園は包装表示、産地育成、生産工程の整備を組み合わせ、国産茶葉を支える方針を打ち出した。輸入増加と国内生産の縮小が同時に進む中、同社の取り組みは日本茶の供給基盤を維持するための対応となる。
