米船舶誘導作戦の中止で露呈した湾岸連携の不備と中東情勢

井村 智規
经过

船舶誘導作戦の急停止が表面化

米国のトランプ政権がホルムズ海峡で実施した船舶誘導作戦は、開始から短期間で停止された。米NBCニュースは、この中止のきっかけとして、サウジアラビアが事前通告のない作戦開始に強く反発したと報じた。サウジは自国の空軍基地使用や領空通過を認めないと米軍に伝えたとされる。

作戦は5月4日、ペルシャ湾で足止めされた船舶の通航を支援するために始まった。トランプ大統領は5月5日、イランとの戦闘終結に向けた協議の進展を理由に中止を発表した。だが、報道では、実際には湾岸諸国との調整不足が作戦停止につながった可能性が示されている。

サウジの反発が米軍運用を左右

サウジアラビアは、米国による作戦開始に事前説明がなかったことを問題視した。NBCニュースによると、サウジは米軍に対し、国内の基地利用や領空通過を制限する考えを伝えた。米軍はサウジのプリンス・スルタン空軍基地に戦闘機や空中給油機を配備しており、同基地の使用は作戦遂行に重要な意味を持つ。

サウジ側は、ホルムズ海峡での米国の通過支援措置が、イランとの交戦を再び激化させることを警戒したとされる。作戦が拡大すれば、サウジを含む湾岸諸国が被害を受ける恐れがある。軍事面で米国と協力してきたサウジにとっても、自国の安全を損なう可能性のある作戦には慎重な姿勢を示した形だ。

皇太子との電話会談も不調

トランプ大統領は、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と電話会談した。しかし、NBCニュースは、この協議で事態を収拾できなかったと伝えている。米側は最終的に、米軍機の領空通過に関する許可を得るため、船舶誘導作戦を停止したという。

この経緯は、米国が中東で軍事行動を進める際、湾岸諸国との事前調整が不可欠であることを示した。サウジだけでなく、他の湾岸諸国にも事前通知がなかったとされる点は、地域全体の協力体制に影響する。作戦の目的が船舶の安全確保であっても、周辺国の同意を欠けば継続は難しくなる。

公式説明と報道内容に隔たり

トランプ大統領は作戦停止について、イランとの協議で大きな進展があったと説明した。これに対し、NBCニュースの報道は、停止の直接的な要因がサウジの反発だった可能性を示している。両者の説明には隔たりがあり、米政権の判断過程に注目が集まる。

ホルムズ海峡は、世界のエネルギー供給に深く関わる主要な航路である。この海域で軍事行動を取る場合、米国とイランの対立だけでなく、周辺の湾岸諸国の安全保障にも影響が及ぶ。今回の対応は、米国の判断が地域各国との調整不足を表面化させ、中東外交の難しさを示す結果となった。

湾岸協力の再構築が課題

米軍がサウジや他の湾岸諸国の基地を使えなくなれば、対イラン作戦に支障が出る。空軍基地や領空の利用は、戦闘機や空中給油機の運用に不可欠な要素である。今回の作戦停止は、米国の軍事能力だけでなく、同盟国との信頼関係が作戦継続を左右する現実を浮き彫りにした。

サウジはこれまで対イラン作戦で米軍の基地利用を認めてきた。だが、事前説明を欠いた作戦には明確な不満を示したとされる。ホルムズ海峡を巡る緊張が続く中、米国には湾岸諸国との連絡体制を立て直し、軍事行動と外交調整を両立させる対応が求められる。

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