移行措置が最終段階に入った状況
政府は12月11日、ガソリン価格を安定させる補助金を1リットル当たり25円10銭へ引き上げた。増額幅は5円10銭で、暫定税率に相当する金額まで補助が積み上がったことになる。この措置は31日に予定される暫定税率の廃止による急激な価格変化を避けるために講じられたものである。半世紀続いた税制の転換点を迎える中、補助金の段階的増額によって市場への影響を最小限に抑える狙いがある。補助は石油元売りへの支給を通じて徐々に小売価格へ反映される仕組みであり、全国的に価格の緩やかな調整が進んでいる。
店頭価格の推移と家計負担への影響
経済産業省が12月10日に示したデータでは、8日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は163円70銭となった。前週比で1円10銭下落し、5週連続の値下がりとなっている。今回の補助金増額により、店頭価格はさらに5円前後低下すると見込まれており、年末にかけて家計や企業の負担軽減につながる状況が続く可能性が高い。価格が急落すると販売現場が混乱することがあるため、政府は市場の安定性を最優先に移行措置を設計してきた。補助金の反映には数日から1週間程度を要するが、地域差を抑えつつ価格調整が進む構造が維持されている。
暫定税率廃止の背景にある政策転換
ガソリン税の暫定税率は、1リットル当たり25円10銭が本則税率に上乗せされる形で運用されてきた。昭和49年に道路整備財源として導入され、その後は一般財源化されたが、財政構造の見直しを求める議論が続いていた。与野党6党が廃止に合意し、11月に関連法が成立したことで、年末に制度が終了することとなった。軽油引取税の暫定税率も2026年4月に撤廃される予定であり、燃料税体系全体の再編が進んでいる。補助金は廃止と同時に終了し、前後で価格が大きく変動しないよう調整されている。
税収減少と今後の財源確保の課題
暫定税率の撤廃により、国と地方を合わせて年1兆5千億円規模の税収が失われる。政府と与野党は代替財源として、法人税に関する租税特別措置の見直しや、高所得層への課税強化などを検討項目に掲げている。合意文書では年内に方針を示すとしているが、具体的な制度設計は明らかになっていない。道路インフラの維持に必要な財源の扱いについても、今後1年程度をめどに再検討することが示されており、安定的な財源確保が大きな論点になっている。税体系の見直しと価格安定策を同時に進める必要性が浮き彫りとなっている。
年末以降の価格水準を見据えた動き
補助金と暫定税率廃止が同時に終了することで、年末前後の店頭価格はほぼ横ばいになる見通しが示されている。段階的な補助金増額により市場が急変せず、供給体制への影響も限定されるとみられる。今後の焦点は、税収減への対応策と燃料価格の安定を両立させる政策運営に移る。価格水準の動向は、家計や物流コストに影響するため、業界関係者も注視している。制度変更を経て市場環境がどのように変化するかが問われる局面である。
