AI活用差拡大への対応が焦点に
G7の産業・デジタル・技術担当相による会合がモントリオールで開かれ、中小企業のAI導入を後押しする複数の施策が合意された。大企業ではAI活用が事業効率化や新規サービス開発の手段として広がる一方、中小企業では知識不足やリスク対応の難しさが障壁となり、導入格差が広がっている状況にある。今回の会合は、こうした企業間の差を是正することを目的とし、国際的な協力の必要性を明確にした。
データ環境整備と通信基盤の強化
AIを活用するためには高速通信網と質の高いデータ環境が不可欠であり、G7はこれらを整備する方針を共有した。中小企業は大規模投資が難しく、デジタルインフラの整備が不十分なケースも多い。通信基盤の強化は、クラウド利用やAIモデルの運用を安定させるための最低条件となる。さらに、高品質データへのアクセスを確保することで、AI導入の初期段階から活用効果を見極めやすくなる点が強調された。
普及教育と高度人材確保の必要性
中小企業でAIを効果的に運用するには、基礎知識の普及と専門人材の育成が不可欠とされた。G7は企業内部での教育機会の創出を重視し、AIに関する理解を深める取り組みを広げる方針を確認した。また、高度な技術を扱う人材は各国で不足している現状があり、持続的な育成体制の構築が課題に挙げられた。教育機関や産業界との連携を通じた人材確保の推進が求められている。
安全性確保と規制の明確化
AI技術には誤作動やデータ処理上の問題が発生する可能性があり、リスク管理の強化も議題となった。中小企業はリスク評価に必要な専門知識を十分に持たない場合が多く、明確な指針が重要となる。G7は関連法規の透明性を高め、利用者が適切な判断を下せる環境を整える方針を示した。問題発生時の対応体制を共有することも重視され、安全性と信頼性の担保が導入促進の前提とされた。
技術協力拡大と供給網の安定化
会合では、AI以外の技術分野における国際的な協力拡大も確認された。量子技術については新たな作業部会を設け、各国が連携して研究や人材交流を進める方針が決まった。また、半導体供給網の安定化についても継続的に取り組むことで一致した。供給網の強靭化は産業全体を支える基盤であり、長期的な経済成長を下支えする要素として位置づけられた。
