金融大手が競うAI戦略の全体像を描く メガバンク各社がAI競争を加速する構図

笠原 美琴
经过

三井住友FGの大型計画が浮上

三井住友フィナンシャルグループが、2028年度までの3年間で1兆円規模のAI関連投資を行う方針を固めた。同社は業務に占める事務負担の軽減を進め、営業体制の強化につなげる目標を掲げる。過去の投資額から大幅な増加となり、デジタル化を事業基盤の中心に据える姿勢が明確になった。今回の計画は、同社の中期経営戦略において最重要課題の一つとなる。

新会社が担う開発体制の強化

8月にシンガポールで立ち上げた新会社は、国際的なAI開発の中心となる位置付けだ。米マイクロソフトで要職を務めた人物を迎え、グループ横断で業務改善を進める役割を担わせている。既存の40以上のプロジェクトを統合的に管理し、開発から運用まで一貫した体制づくりを進める点が特徴だ。これにより、グループ全体での技術活用を加速させる狙いがある。

AI活用領域の広がりを示す動き

営業資料の作成、財務情報の収集、各種費用処理、コールセンター応対など、多様な業務でAI活用が計画されている。AIが適切に応対できる領域を広げることで、人的資源を重点分野へ再配置しやすくなる構造が生まれる。また、AIエージェントを活用した問い合わせ対応機能の強化は、顧客サービスの品質向上にも直結する要素となる。

個人向け金融サービスの刷新

個人向け総合金融サービス「オリーブ」では、AIが利用者の預金状況を基に資産運用案を提示する仕組みが検討されている。利用者数が多数にのぼる同サービスでは、提案の自動化によって提供価値が一段と高まるとみられる。資産形成ニーズの高まりを背景に、AIを軸とした顧客支援の強化が競争力の確保につながる。

大手行が示す競争構造の変化

みずほFGは26〜28年度に最大1,000億円の投資計画を掲げ、三菱UFJFGはデジタルバンクへのAIコンシェルジュ導入を検討している。各社が将来の金融サービスを形作る基盤としてAIを位置づけており、競争領域は従来の店舗網や金利設定とは異なる次元へ移行しつつある。AIが次世代インフラとされる中、技術活用の速度が企業価値に大きく影響する局面を迎えている。

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