法廷で示された被告の新たな発言
奈良地裁で12月4日に行われた安倍晋三元首相銃撃事件の公判では、山上徹也被告がこれまで語ってこなかった遺族への謝罪を初めて表明した。「非常に申し訳ない」と述べた発言は注目を集め、被告の心境の変化を示すものと受け止められている。被告人質問はこの日が5回目で、これまでより踏み込んだ内容が語られた。
家族への感情と事件の影響認識
弁護側の質問に対し、被告は「安倍氏の家族に恨みはない」と明言した。遺族が長期間抱えてきた精神的負担に触れ、自分も身内を突然失った経験があると述べるなど、これまでとは異なる姿勢を示した。被告の回答は慎重であり、遺族への理解を示す形で展開された。
標的とした判断の誤りを説明
旧統一教会の問題と自身の行為がどう関連したのかについて、被告は改めて説明を求められた。教団幹部から安倍氏に狙いを移したことを誤りだったと述べ、強い影響力を持つ人物を襲ったことの結果の重大性を認めた。模倣的な事件や憶測が広まった点についても、自身の責任を重く見ていると語った。
社会的議論の広がりと被告の見解
事件が宗教団体への解散命令につながり、宗教2世問題が注目されるようになったことについて、被告は「予見していなかった」と述べた。一方で、問題提起が広がった状況を否定せず、社会的議論が深まった点は一定の意義があるとの認識を示した。事件が社会に及ぼした構造的影響への理解も問われた場面となった。
昭恵氏の不在と公判の位置づけ
前日の3日には昭恵氏が被害者参加制度を利用して初めて法廷に出席した。しかし4日の公判には出廷せず、傍聴席は落ち着いた雰囲気となった。公判が進み、被告の供述が量刑に関わる材料として整理されつつある中、今後の審理では動機や責任認識がさらに検討される見通しだ。
