東エレク台湾法人を訴追 供給網協力への影響が焦点

井村 智規
经过

機密流出事件の続報が判明

台湾の司法当局は12月2日、東京エレクトロンの台湾法人を国家安全法と営業秘密法の違反容疑で起訴したと発表した。これは、台湾積体電路製造(TSMC)の高度な技術情報が外部に渡ったとされる事件の捜査が進む中で行われた措置であり、半導体産業における情報保護の厳格化が示された。起訴の対象となったのは同社が台湾で設立した完全子会社で、事件全体の構図の中でも重要な位置を占めている。

監督義務を巡る判断が示された背景

検察の説明によれば、東京エレクトロン側は社員による不正行為を防ぐための実効性ある仕組みを構築していなかったと判断されたという。既存の規定では違法行為を抑止するには不十分であったと結論づけられ、企業としての管理体制が問われる結果となった。台湾では産業保護を目的とした法整備が進んでおり、今回の判断はその流れと一致する形で示された。

経済安全保障の流れが影響

この事件を巡り、当局は企業を国家安全法で訴追すること自体が初めてであると強調している。罰金は最大1億2,000万台湾元とされ、金額の大きさからも台湾が先端技術の保全に強い姿勢を示していることがうかがえる。台湾の半導体産業は世界的に重要な地位を持ち、技術流出は経済安全保障に関わる問題とされており、今回の起訴は象徴的な意味を持つ。

個人訴追から企業訴追へ発展した経緯

本件ではすでに、同社の元社員3名がTSMCの機密情報を不正に取得したとして訴追されている。今回の企業起訴は、個人の行為にとどまらず、組織の統制責任に対しても問題が及ぶ可能性を示している。台湾当局は、不正行為が組織的に行われた証拠は確認されていないとしつつも、必要な内部管理が行われなかった点を重視した。

日台の半導体協力に及ぶ影響

日本と台湾は、中国への依存度を下げるため半導体関連の連携を進めているが、今回の事案はその協力体制に一定の緊張感をもたらす可能性がある。重要技術の扱いを巡る問題は、サプライチェーン全体の信頼性に関わるため、両地域での企業活動や共同開発の在り方が見直される可能性もある。台湾側は、今回の起訴が特定国を意識したものではなく、産業基盤の保護を目的とした措置であると説明している。

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