南海電鉄が全線級対応の乗車額上限制度を開始へ

早瀬 涼真
经过

クレジットタッチ決済利用者向けの新制度が発表

南海電気鉄道は、クレジットカードのタッチ決済利用者に対して1日の請求額を2200円までとする新しい料金制度を導入すると公表した。導入時期は2025年12月1日から2026年3月31日までで、期間中は対象区間の乗車で自動的に上限が適用される。利用者が事前に登録を行う必要はなく、タッチ決済機能付きカードやスマートフォンを改札にかざすだけで対象となる仕組みが整えられた。

対応駅拡大によりタッチ決済普及が進展した背景

南海電鉄はタッチ決済の導入を段階的に広げてきたが、今回新たに高野線の下古沢から極楽橋区間の5駅でも対応機器を整備する。これにより全105駅中97駅でタッチ決済が利用可能となり、大阪府内から和歌山県に至るまでの広い範囲で決済方式の共通化が実現する。非接触決済への対応は、鉄道利用時の利便性向上に寄与し、乗客の移動行動に合わせた環境整備が行われてきたことがうかがえる。

観光地アクセス向上に伴う運賃負担の軽減が進む状況

難波と高野山を結ぶ往復運賃は従来2860円だが、新制度の適用により660円分が割り引かれる。高野山を訪れる観光客にとっては移動コストが抑えられる点が特徴であり、長距離路線の利用促進にもつながる。特急料金は制度対象外だが、乗車額上限の設定により多くの利用者にメリットが及ぶ。南海電鉄は観光地へのアクセスを支える路線を運行しており、今回の取り組みはその利便性を高めるものとなる。

フェリー連携で進む決済統合の実績が示す影響

南海電鉄はタッチ決済導入において先行する取り組みを多く展開してきた。徳島港と和歌山港を結ぶフェリーではすでに同方式を採用しており、2022年にはフェリーと鉄道を組み合わせた利用時に鉄道運賃が無料となるサービスを導入した経緯がある。複数交通手段の決済方式を統一することで利用者の移動が簡便になり、今回の上限設定もその流れの一部として実施される。

年末需要を意識した施策が鉄道利用の拡大を後押し

上限運賃制度の導入は年末年始の観光需要を視野に入れたもので、訪日客が増加する時期の利便性向上につながる。乗車回数にかかわらず一定額で利用できる環境が整備されることで、鉄道移動のハードルが下がり、沿線地域の観光回遊にも影響を与える。南海電鉄は今回の実証結果を踏まえ、今後のサービス展開の検討に活用するとみられ、決済環境の改善が乗客サービス向上の重要な要素となっている。

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