トヨタが米国でHV体制拡大、5工場に1400億円を追加投入

宇津木 柊
经过

ハイブリッド市場の需要増が影響

トヨタ自動車は2025年11月18日、米国におけるハイブリッド車需要の高まりを踏まえ、5工場に総額9億1200万ドルを投資する方針を示した。米市場ではHVとPHVの販売が引き続き増加しており、1〜10月の販売台数は前年より大幅に伸びている。電気自動車の税制優遇策終了後、消費動向が変化しHVの存在感が高まったことが背景となっている。今回の整理は、北米での供給体制をさらに強化する必要性が高まったことを反映したものとなる。

カローラHVの現地生産開始が発表

投資対象の中心に位置づけられたのがミシシッピ州の工場であり、ここでは2028年からカローラHVが米国内で初めて生産される計画だ。従来日本から輸送してきた車種を現地で組み立てることにより、生産時間の短縮やコスト管理の精度向上が期待される。新ライン導入のため1億2500万ドルが充当され、長期的な供給網の安定化に寄与するとみられる。現地メーカーとの競争が強まる中、トヨタは効率化戦略を前面に出している。

HV関連設備の拡充が進展

ウェストバージニア州ではHV向けエンジン生産の拡張が計画され、4億5300万ドルを投入して設備増強が行われる。さらに、ケンタッキー、テネシー、ミズーリの各工場でもHV部品の製造能力を引き上げる整備が進められる。これらの強化策は2027年以降に稼働が予定されており、北米生産の柔軟性を高める工程が連動して動く構成となっている。今回の施策により、新たに252人が雇用される見込みで、稼働エリア全体の労働力も拡大する。

北米生産比率の高さが示す課題

トヨタは米国向け販売車両の約半数を同国で生産し、カナダやメキシコを含む北米全体では76%が現地で組み立てられている。こうした高い地域内生産比率は供給の安定を支える一方、需要変動に応じた再編や設備増強の重要性を浮き彫りにするものとなる。今回の追加投資はその課題に応えるために組み込まれた施策であり、HV市場が拡大する環境に即した生産体制の確立を目指す位置づけとなっている。

北米投資枠組み全体の中での位置付けが明確化

トヨタは11月12日に、今後5年間で最大100億ドルを米国に投資する枠組みを公表していた。今回の9億1200万ドルの決定はその一部にあたり、HVやEVの現地製造強化を順次進める計画の中核をなす措置といえる。設備の増設や部品供給網の整備は段階的に進められ、北米市場における競争優位性の確保が図られる。需要構造の変化に即した生産網を整備することで、トヨタは継続的な市場対応力の向上を狙う。

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