ディープシーク研究員、AIによる雇用喪失の危険を警告

井村 智規
经过

世界会議でAIの影響を懸念する発言が相次ぐ

中国の新興AI企業ディープシーク(DeepSeek)の上級研究員陳徳里氏が、浙江省烏鎮で開催された世界インターネット会議(WIC)で、人工知能の発展がもたらす社会的リスクについて警告した。陳氏は、AIがもたらす短期的な利便性を評価しつつも、長期的には人間の職業を大きく変える可能性があると述べた。

5~10年で労働市場に変化、20年で社会構造が転換

陳氏は、AIの進化が「5〜10年以内に多くの職種を代替し、10〜20年で人間の残る仕事さえも奪う恐れがある」と発言した。特に製造、教育、行政など幅広い分野で自動化が進み、雇用の安定が脅かされると指摘。技術の進展が社会不平等を拡大させる懸念を示した。

テクノロジー企業に「社会の守護者」としての責任を強調

陳氏は、AI企業が単に利益を追求するのではなく、社会的責任を果たす立場を取るべきだと訴えた。「テクノロジー企業は未来の守護者として行動しなければならない」と述べ、倫理的な開発と政策協調の重要性を指摘した。AIの発展を制御する枠組みづくりを求める声が、業界内外で高まりを見せている。

ディープシークの台頭と技術的影響

ディープシークは2025年1月、米国主要モデルを上回る性能を持つAIを低コストで開発したことで国際的な注目を集めた。その後も独自のオープンソース戦略を進め、CambriconやHuawei製の国産チップとの互換性を確保。中国が自立したAIエコシステムを築く上で中心的な存在とされている。

雇用問題をめぐる議論が広がる見通し

今回の発言は、ディープシークがAIの負の側面を公に認めた初のケースとみられ、技術開発と社会的リスクの両立が新たな焦点となっている。AIによる労働代替の現実化が進む中、政策当局と企業がどのような対策を講じるかが注目される。

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