オープンAI、アマゾンAWSと長期契約 クラウド供給網を拡大

長峰 詩花
经过

AI需要拡大を背景にクラウド多角化を決断

米オープンAIは11月3日、米アマゾン・コムのクラウド部門AWSと総額380億ドル(約5兆8千億円)の長期契約を締結したと発表した。契約期間は7年に及び、ChatGPTをはじめとする生成AIモデルの開発・運用でAWSのクラウド基盤を活用する。AI利用が世界的に急拡大するなか、同社は安定的なインフラ供給を確保する狙いだ。

独占的パートナー関係の再構築

オープンAIは2019年以降、マイクロソフトのクラウド「Azure」を中心に運用してきたが、10月28日の組織再編により優先交渉権を撤廃し、他社との契約が可能になった。これにより、マイクロソフト依存から脱却しつつも、同社との技術提携は2032年まで延長されている。今回のAWS契約は、戦略的な「並列提携」への転換を示すものといえる。

エヌビディア半導体で開発効率を強化

AWSが提供するデータセンターにはエヌビディア製の高性能AIチップが導入され、2026年末までに数十万個規模で稼働する見通しだ。オープンAIはこれを基盤に、ChatGPTや次世代モデルの学習速度を飛躍的に高める計画である。AWSはAI処理向けのクラウド市場で競合するマイクロソフトやグーグルとの差別化を進める構えを見せる。

インフラ支出、1兆ドル超えの巨額規模

オープンAIはAWSのほか、オラクルやソフトバンクグループともデータセンター供給契約を結んでいる。既存の契約を含めたAIインフラ支出総額は約1兆4,000億ドルに達し、同社の報じられる年商130億ドルを大きく上回る。こうした巨額投資により、生成AI開発を支える計算能力の確保を急ぐ姿勢が鮮明となっている。

株式市場の反応と今後の課題

この発表を受け、3日の米株式市場でアマゾン株は約4%上昇した。クラウド契約が収益拡大への期待を高めた格好だ。一方で、オープンAIの投資ペースに対しては資金調達力への疑念も浮上している。世界的なAI開発競争が続くなか、同社がどこまで持続的な資本運用を実現できるか注目される。

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