約8年ぶりの共同訪問が実現
米国のヘグセス国防長官と韓国の安圭伯国防相は11月3日、南北軍事境界線上の板門店にある共同警備区域(JSA)を訪れた。米韓の国防トップがそろって現地に立つのは2017年以来、およそ8年ぶりとなる。両氏は南北の境界線を挟み、兵士らの説明を受けながら施設を視察した。握手を交わす姿も公開され、両国が改めて強固な安全保障関係を維持していることを示す象徴的な場面となった。
北朝鮮への抑止を示す政治的演出が明確に
この共同訪問は、北朝鮮に対して米韓同盟の結束と警戒を印象づける意図を持つとみられる。北朝鮮はここ数週間、極超音速兵器を含む新型ミサイルの実験を行うなど挑発を強めており、板門店という象徴的な場所を選んだ視察は、挑発行動を牽制する意味合いを帯びている。米国側は外交的対話の余地を残しつつも、軍事的抑止を明確に示す二重のメッセージを発している。
米韓安全保障協議で同盟深化を確認へ
両氏は4日にソウルで開催される定例の米韓安全保障協議(SCM)に出席し、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する防衛体制強化を協議する予定である。第2次トランプ政権の発足後、両国防相の対面協議はこれが初めてとなる。トランプ政権下で再調整が進む在韓米軍の運用や、合同演習のあり方なども議題に上るとされる。
原子力潜水艦建造や防衛費分担問題も焦点
会談では、韓国が進める原子力潜水艦の建造計画や、防衛費分担の増額要求も取り上げられる見通しだ。トランプ大統領は同盟国に対して自国の防衛費負担を引き上げるよう求めており、韓国に対しても例外なく圧力がかかっている。米側は地域抑止力の強化と同時に、負担の公平性を重視する姿勢を崩していない。
米韓同盟の持続的強化と地域安定の課題
今回の板門店訪問は、象徴的な意味を超えた現実的な防衛協力強化の一環と位置づけられる。両国は朝鮮半島の安定と地域の安全保障体制を維持するため、今後も緊密な連携を続ける方針を示している。北朝鮮情勢が不安定さを増す中、米韓同盟の結束が東アジア全体の安定にどこまで寄与できるかが問われる局面に入っている。
