世界経済の不安定化に各国が警戒感
韓国の慶州で30日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚会議では、トランプ米政権の通商政策を背景に、自由貿易の維持と公正な経済秩序の確立を巡る議論が展開された。
米国の高関税措置が貿易の流れを変える中、各国は「分断より協調を」との立場を共有し、経済的な安定を守る方策を模索した。
自由貿易とAI規制の両立に課題
会議では、自由貿易の推進に加え、AI(人工知能)技術の活用と管理のバランスが主要議題となった。AIの倫理的利用やデータ保護に関して加盟国間の立場が分かれ、結論には至らなかった。
日本代表の茂木敏充外相は「革新と責任の両立が不可欠だ」と述べ、赤沢亮正経産相と共に、共通ルールづくりの必要性を訴えた。
声明採択は見送り、調整作業続く
意見の隔たりが大きく、閣僚声明の採択は断念された。今後は事務方が文言調整を進め、31日からの首脳会議での最終合意を目指す。関係者によると、「加盟国間の相互理解を深める過程が重要だ」として、対話継続の姿勢が確認された。
日本は供給網と食料安全保障で連携を提案
日本はサプライチェーンの強靱化や食料安全保障の分野で具体的協力を提示。アジア太平洋地域における安定的な供給体制の構築を重視し、「危機に強い経済圏」を掲げた。
また、少子高齢化やデジタル格差といった社会課題の共有も行い、長期的な政策連携の必要性を訴えた。
首脳会議へ向けて協調姿勢を維持
31日からは高市早苗首相が出席する首脳会議が始まる。2日間にわたる議論では、各国首脳が協調姿勢を確認し、実効的な対応策を打ち出すことが期待される。
一方、米中間の摩擦が続く中、経済連携の行方には依然として不透明感が残る。各国は結束を強め、自由で公正な貿易体制の再構築を目指す構えだ。
