対米投資に懸念残す日本企業、主導権は米側に

早瀬 涼真
经过

投資実行文書に署名も企業の反応分かれる

高市早苗首相とトランプ大統領は10月28日、日米関税合意に基づく総額5500億ドル(約84兆円)の対米投資を確認する文書に署名した。だが、投資案件の主導権を米側が握る体制への懸念が残り、日本企業の対応は分かれている。政府関係者によれば、関心を示す企業が増える一方で「条件次第では慎重姿勢を取らざるを得ない」との声もある。

経済安全保障の9分野に焦点

今回の投資計画は、半導体、エネルギー、AIなど9分野を中心に設定された。政府系金融機関である国際協力銀行(JBIC)が出資・融資保証を行う方針で、日米双方が経済安全保障と成長促進を掲げる。両国はまた、AI・次世代通信・核融合といった先端7分野で協力覚書を締結し、技術連携を加速させる。

大規模プロジェクトに日本企業が参画検討

三菱重工業やIHIは、米ウェスチングハウス社が推進する小型モジュール炉(SMR)建設計画への参加を検討している。事業規模は最大1000億ドルに上る見通しだ。さらに三菱電機は、米国内で発電システムやデータセンター向け設備の供給を模索し、最大300億ドル規模の供給網強化を検討している。

日本側のリスクと交渉力に注目

ただし、投資案件を推薦する投資委員会は米商務長官を議長とする米側組織であり、最終決定権もトランプ氏が握る。日本が資金拠出を停止した場合、関税再引き上げの可能性も残るため、企業側には慎重論が根強い。高市政権のもとで交渉を担う茂木敏充外相と赤沢亮正経産相の手腕が問われる。

首脳レベルでは防衛協力と外交連携を強調

首脳会談では、防衛費の前倒し増額やレアアース共同開発など安全保障分野でも協力を確認した。高市首相は「日米同盟を世界で最も強固な関係へ高める」と表明し、トランプ氏も「太平洋の平和の礎だ」と応じた。外交・防衛両面での緊密な連携が今後の経済協力を支える基盤となる。

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