高市首相の指示受けた審議会が初開催
10月27日、厚生労働省の労働政策審議会分科会が開かれ、高市早苗首相が上野賢一郎厚労相に指示した労働時間規制の緩和について初めて労使の意見が交わされた。
会合では、2019年から施行された働き方改革関連法の見直しを軸に、今後の労働制度の在り方が議論された。
労働者側は「働き過ぎ助長の危険」と警鐘
労働者側の委員は、「労災請求の増加や心身の不調が報告されている」とし、規制緩和が働き過ぎを助長する恐れがあると懸念を表明した。
現行制度の時間外労働の上限が「過労死ラインに近い水準」であることから、「これ以上の緩和は認められない」と強調した。
また、柔軟な働き方を求めるなら、現行の法体系の中で対応可能だと述べ、法改正そのものに慎重姿勢を示した。
経営側は「多様な働き方を支える制度に」と要望
これに対し、企業側の委員は「自律的な働き方を阻害している現行制度を見直すべき」と指摘。
特に、勤務実態にかかわらず成果で評価する「裁量労働制」の拡充を求めた。
経営側は「すべての働き手に一律の上限を課すのは実情に合わない」とし、「規制緩和は時代に沿った前向きな検討だ」と主張した。
政府は年内にも実態調査を公表へ
厚生労働省は、施行から5年以上が経過した働き方改革関連法の運用実態を把握するため、労働時間や健康影響に関する調査を実施中で、結果を年内にも公表する方針だ。
上野厚労相は「多様な立場の意見を踏まえ、丁寧な議論を重ねる」と述べ、拙速な判断を避ける姿勢を示している。
政府方針の行方に注目集まる
働き方改革の理念と経済の効率化の両立をどう実現するかは、今後の労働政策の試金石となる。
労使の対立は深まる一方で、首相の主導による規制見直しがどのような形で具体化するのか、政権運営にも影響を及ぼす可能性がある。
