死者を出す事態に拡大する秋田の被害
秋田県では、クマによる人的被害が急増している。27日現在、年間の被害件数は47件に達し、死者2人、重軽傷52人という深刻な状況だ。東成瀬村では24日に4人が襲われ1人が死亡。市街地でもクマの出没が頻発し、住民の生活圏に危険が迫っている。
駆除体制が限界に 人手と高齢化が課題
県内では猟友会のメンバーで構成される駆除実施隊が対応しているが、高齢化と人員不足により活動が追いつかない。箱わなにクマがかかっても回収や解体ができず、対応が遅れるケースも多い。県はこれまでに1000頭以上を駆除したものの、出没件数は減少せず、自治体単独での対応が困難になっていた。
自衛隊派遣を正式要請へ
秋田県の鈴木健太知事は27日、「国の力を借りなければ収拾がつかない」として、防衛省への自衛隊派遣要請を発表した。28日には防衛相小泉進次郎との面会を予定しており、正式な要請を行う。防衛省も同日、派遣の前提で部隊の調整に入った。派遣後は箱わなの設置や運搬、捕獲個体の処理などが中心となる。
武器使用なしの後方支援を想定
防衛省によると、自衛隊法では有害駆除での武器使用は規定されていない。このため派遣部隊は銃を持たず、あくまで支援任務に徹する方針だ。関係者は「自衛隊は便利屋ではないが、被害は看過できない。安全確保の範囲で協力する」と述べている。過去には北海道でシカ調査にヘリを用いた事例があり、今回も同様の後方支援が中心になる見通しだ。
国の支援で住民の安全確保を模索
県内では被害の再発防止と住民の安全確保が喫緊の課題となっている。防衛省と秋田県は、地域の猟友会や自治体と連携し、被害地域での巡回や安全啓発を強化する方針だ。政府は今後、他地域への展開については被害状況を踏まえて慎重に判断する考えを示している。
