段階的停止案を承認、28年1月までに全面終了
欧州連合(EU)は20日、ルクセンブルクで開かれた閣僚理事会で、ロシア産石油と天然ガスの輸入を2028年1月までに段階的に終了する方針を正式に承認した。2026年以降、新規契約によるロシア産ガスの輸入を禁止し、同年6月までに短期契約を終了、28年1月には長期契約も打ち切る。ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中、エネルギー供給を通じたロシアの収益源を断つ狙いが明確になった。
EU加盟国間で立場に温度差、内陸国に配慮
制裁措置の協議では、ハンガリーやスロバキアなどロシア産エネルギーに依存する国が強い懸念を示した。最終的な合意案では、地理的条件が厳しい内陸国に対し移行期間を延長する柔軟規定が設けられた。フランスやベルギーは代替供給源の確保を進めているが、加盟国全体のエネルギー網再構築には時間を要するとみられる。
LNG輸入禁止も制裁の柱に、経済圧力を強化
EUはロシア産LNGの輸入を2027年1月から全面的に禁止する方針も同時に打ち出した。欧州委員会は、LNG禁止が「ロシア経済に直接打撃を与える」と強調している。2022年時点で45%を占めていたロシア産ガスの比率は現在12%に低下したが、完全な依存脱却には再生エネルギー投資の拡大が不可欠とされる。
海上輸送の監視強化、「影の船団」封じ込めへ
EUはまた、ロシアが制裁逃れに使用する船舶を取り締まるため、港湾管理当局や加盟国間の情報共有を強化する。制裁の抜け穴とされる「影の船団」には、第三国籍の船舶が多数含まれており、EUは新たな臨検体制を導入する見通しだ。外交安全保障上級代表のボレル氏は「制裁はこれが最後ではない」と述べ、今後も追加措置を検討する考えを示した。
エネルギー転換の加速、欧州の独立性を確立へ
ロシア依存からの脱却は、EUにとって経済・安全保障の両面で試金石となる。再生可能エネルギーの拡大と域内連携によって供給網を再構築し、外部圧力に左右されないエネルギー体制の確立を目指す。今回の決定は、欧州が地政学的な主導権を取り戻すための重要な一歩と位置付けられている。
