経済情勢の堅調さを背景に利上げ論高まる
那覇市で講演した日銀の田村直樹審議委員は16日、物価の上昇リスクを背景に、金融緩和の継続が過度なインフレを招く恐れがあると述べた。田村氏は「利上げを検討すべき局面」と発言し、景気の持続的拡大を支えるためには段階的な金利正常化が必要との見解を示した。日銀が9月に据え置きを決定して以降も、企業マインドの改善が続いていることを理由に挙げた。
「前倒しの物価目標達成」可能性を強調
田村氏は、日銀が掲げる2%の物価安定目標について、「想定より早い時期に到達する可能性がある」と指摘。賃上げの定着や価格転嫁の動きが経済に広がりつつあり、物価上昇の勢いを支えていると述べた。また、食品や外食分野の価格高騰が続く中、企業の価格設定行動が積極化している点も挙げた。
急速な利上げのリスク回避を意識
「利上げを遅らせれば、将来的に急激な金利上昇を余儀なくされる」と警鐘を鳴らし、金融環境の調整を進める必要があると主張した。金融緩和の度合いを徐々に縮小し、経済への副作用を最小限に抑えることが望ましいとの立場を示した。現行の政策金利0.5%は依然として中立金利(約1%)を下回るとし、金融政策が依然として緩和的であると指摘した。
海外要因への警戒と日本経済への波及
講演では、トランプ米政権の関税政策が海外経済に与える影響にも触れた。田村氏は、海外経済の減速が日本にも波及する可能性を認めつつ、「当初の想定ほど深刻ではない」との見方を示した。企業の前向きな投資姿勢や人手不足を背景とした賃上げの継続が、日本経済の底堅さを支えていると分析した。
日銀内の政策議論、今後の焦点に
田村氏の発言は、日銀内での政策スタンスの違いを浮き彫りにした。次回の金融政策決定会合(10月29〜30日)では、利上げ提案が再び議題に上る可能性がある。市場では、田村氏の発言が金利見通しを左右する要因として注目されており、金融政策の転換点となるかが焦点となっている。