レアアース規制強化で波紋 中国が供給網を再掌握へ

早瀬 涼真
经过

技術輸出も規制対象に拡大

中国商務省は10月9日、レアアースおよび関連技術の輸出規制を大幅に拡張すると発表した。新制度では、レアアースを使用する製品や素材を海外に出す際、輸出ライセンスの取得が義務化される。また、採掘・磁石製造・リサイクルなど、関連する技術そのものも許可制となる。これにより、中国はレアアース分野での技術的支配力を一段と強化する。

軍事転用防止を理由に制限強化

同省は、国外企業によって第三者へ渡ったレアアースが軍事に利用されている事例が確認されたと指摘。こうした行為が中国の国家安全を損なうとして、軍事用途向けの輸出を原則禁止とする姿勢を示した。特に、半導体や人工知能(AI)分野への供給は厳格な審査の対象となる。

レアアース規制強化で米中関係が再び緊張へ

今回の発表は、長年続く米中貿易摩擦の中で新たな緊張要因となる可能性がある。中国はこれまで、レアアース供給の優位性を交渉材料として活用してきた経緯がある。近く予定されるトランプ大統領と習近平主席の会談を前に、資源政策を通じた戦略的メッセージを発した形だ。

世界の産業界に広がる懸念

レアアースは電気自動車、風力発電、防衛装備、電子機器など幅広い産業に不可欠な素材である。供給の約7割を中国が占める状況下での規制強化は、各国企業のサプライチェーンに深刻な影響を及ぼす可能性がある。とりわけ、米国や日本の製造業では、代替資源確保や調達多様化の動きが加速しそうだ。

国際社会の対応と先行き

新たな輸出制限の施行時期や運用方法は明らかにされておらず、国際市場では政策の不透明さへの警戒感が強まっている。欧米諸国は今後、中国の動きを注視しつつ、資源供給の自立性を高める取り組みを強化するとみられる。レアアースを巡る地政学的リスクが再び世界経済を揺るがしている。

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